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楓セビルのアメリカンクリエイティビティ NOW!

生活の中心は、YouTube、スマホ、バイラルの「ジェンZ」

楓セビル

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01 コカ・コーラは、今年のスーパーボウルで「Make It Happy」をオンエア。最近増えている“いじめ”の問題を取り上げた。それがジェンZの琴線に触れ、YouTubeで数百万ヒットを記録した。

ジェネレーションZとは?

ここ数年、米国の広告業界で、ミレニュアルズ(Millennials)という言葉を耳にせずに一日が過ぎることはない。マーケターも、広告代理店も、メディア会社も、マーケットの中心に君臨しているこの団塊にリーチすることに寝食を忘れている。理想主義、テクノロジー通で、常に変化するため、なかなか正体が掴めないミステリアスな団塊。米国の総人口の24.5%を占める20才~37才のこの団塊の関心を惹くことが、あらゆるカテゴリーのビジネスの生存の有無を決めるからだ。

ところが最近になって、ミレニュアルズに費やしてきた関心と広告費を、別の団塊に移行させる広告主がぼちぼちと増えてきた。広告主だけでなく、主なリサーチ会社(ニールセン、フォレスター、ガートナーなど)の中にも、ミレニュアルズのリサーチから、この新しい団塊のリサーチへと切り替えるとことが増えている。

この新しい団塊とは何者か?ジェンZ(Zはジーと発音)、正確にはジェネレーションZと呼ばれる団塊である。

時に「センテニアルズ」と呼ばれるジェンZの特徴は、いくつかの短い言葉で表現できる。「セルフィー」「インスタグラム」「モバイル・ビデオ」「ノーモア・フェイスブック」、そして「YouTube」…。19才以下の子どもで、ニールセンを始め、人口統計学を専門とする調査会社によると、現時点ですでに米国総人口の26%を占めると報告されている。しかも、この団塊の可処分所得は総額440億ドル。この膨大な金額が食品からアパレル、玩具、化粧品、ゲーム、スマホ、書籍、スポーツ用品などに使われているのだ。問題は、「マーケターの中にはジェンZがミレニュアルズの小型版だと考えている人が多いことだ。ミレニュアルズとジェンZは、赤とブルーほど違う価値観、ライフスタイル、生い立ちを持っているユニークな団塊なのだ」と、ジェンZ広告代理店と言われるニューヨークのスパークス&ハニー(以後S&H)のシニア・カルチュラル・ストラテジスト、ダン・グルドは言う。同社は昨年末、ジェンZに関する調査結果を発表し、広告業界に波紋を投げかけた。

このリポートによると、ジェンZは、ミレニュアルズとは違う親を持って育った団塊である。それが彼らとミレニュアルズの一線を画している点だ。ミレニュアルズは子供の生活のあらゆる面に関与する、ヘリコプター・ペアレンツと呼ばれる親を持っているのに対し、ジェンZの親(ジェネレーションX)は「自分のことは自分でしなさい」と、問題の解決を子どもに任せ、責任も自分でとらせる。制約を課したり、束縛をしない親のもと育っているため、彼らは小さい時から独立自尊の精神を教え込まれている。このグループに対して伝統的な広告の効果がほとんどないのは、彼らが人の言葉をそのまま信じないからだ。例えば、ミレニュアルズの間で人気のあるテレビ番組「アメリカン・アイドル」が、ジェンZからはそっぽをむかれているのは、「誰が次のスターかをテレビに教えられる必要はない。自分たちで決めるよと考えているからだ」とグルド。

そして、ジェンZは正真正銘のデジタル・ネイティブである。ミレニュアルズもテクノロジーに強い団塊だが、ジェンZはコンピュータやインターネットのない時代を知らない。幼い時からスマホを持ち、ソーシャルメディアで友人を作り,グーグルで情報を集める。S&Hの調査によると、彼らの76%が毎日スマホを使い、50%がラップトップ・コンピュータ、38%がデスクトップ・コンピュータ、36%がiPod、その他の音楽プレーヤーを使っている。彼らにとってデジタルは空気のような存在だ。

そしてジェンZは兄であり、姉であるミレニュアルズたちが、借金を背負って大学を卒業し、就職難に直面しているのを見ているため、いわゆる“アメリカン・ドリーム”なるものを信じない。現実的、打算的、足がしっかりと地についた消費者である。彼らは自分たちがユニークだと信じ、そういった彼らの自己イメージに訴える商品、ブランド、広告主にしか反応しない。例えば完璧で、安全で、美しいライフスタイルを広告のテーマにしているアバクロンビー&フィッチは、ジェンZには何の関心ももたれない。そのかわりに、起業家精神と創意に満ちたファッションを好む。新しいファッション・ブランド「フリー・ピープル」は、遊牧民のような未完成のファッションで、ジェンZの間で人気がある。この1~2年売上げが急上昇しているが、2015年上半期には25%の売上げ増加を見込んでいると報告されている。「要するに、ジェンZは、いくら美味しくてもスプーンで口まで持ってこられたものは食べない。自分で選んだものしか食べないのだ」と、グルドは言う。

02 ジェンZ広告代理店と言われるスパークス&ハニーのシニア・カルチュアル・ストラテジスト、ダン・グルド。

コーク、ASPCA、タコベル、ドリトス、トレリー…



ジェンZのもう一つの特徴は、ブランドをつくる企業の行為に強い関心を持っていることだ。例えば、インターネットでの“いじめ”を取り上げたコカ・コーラの2015年スーパーボウルのCM「メイク・イット・ハッピー」(幸福を作ろう)がジェンZの間で高い評価を得ているのは、そういった彼らの価値観、態度を ...

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