イタリア・ミラノで現在開催中の「2015年ミラノ国際博覧会」。チームラボは日本館のファーストシーンとして、日本の食の原風景である水田をモチーフに制作した。
“日本館の顔”を担当
イタリア・ミラノで「2015年ミラノ国際博覧会」(以下 ミラノ万博)が開催されている。テーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」。5月1日から10月31日までの184日間にわたり、約140の国と国際機関が個性豊かなパビリオンを展開する。日本館のテーマは「Harmonious Diversity―共存する多様性―」。自然を慈しみ、食に関わるさまざまな人々を思う感謝の気持ちを伝える展示だ。日本館の来場者をプロローグと5つのシーンから構成された「食を巡る遥かなる旅」へと誘い、自然と共生する日本の農業、伝統と革新によって生み出され育まれる多彩な日本の食文化などを伝えていく。チームラボが企画・制作したのは、シーン1「HARMONY」とシーン2「DIVERSITY」。館に入って間もなくの場所にある、まさに“日本館の顔”とも言える展示物を制作している。シーン1と2のコンセプトは異なるが、「共通するのは“体感できるインスタレーション”」とチームラボ代表 猪子寿之さんは語る。
シーン1「HARMONY」のコンセプトは「自然と寄り添い、多様な恵みを育む日本の食の産地」。展示は日本の水田がモチーフ。会場全体に稲穂に見立てた円形状のプレートをスクリーンとして腰から膝の高さに設置し、来場者はその間をかき分けるように進んでいく。そこに投影される映像は“四季折々の水田”で、鮒やどじょう、おたまじゃくしが泳ぐ水田に苗が植えられる春、セミの鳴き声が響く夏、一面が黄金色の稲穂になる秋など、1年の変遷を5分間で再現した。
水田を選んだ理由について、猪子さんは「大陸と違い、平野が極めて少ない日本では、水田は棚田に代表されるように川の中流域から上流域の高低差がある場所で発達しました。棚田は自然の循環モデルを崩すことなく、人と自然が共生することで生まれたもの。ミラノ万博は世界中の人が見にくるイベントなので、日本の食の原風景である棚田をモチーフに、高低差のある空間にしようと考えました」と話す。
プロジェクションマッピングで再現された水田の中を鑑賞者が分け入って進むと、その動きに合わせて水面に輪が広がるなど、鑑賞者の位置や動きに合わせて変化するインタラクティブな映像空間だ。ただ、それだけではない。「ミニチュアと実寸の“二重の体験”を実現しました。会場に入った瞬間は高低差のある水田全体を絵画的に見て楽しみ、中へ分け進むと稲穂に囲まれているような感覚を味わえる。新しい体験を目指した空間です」。
映画や絵画とは異なる体験
シーン2「DIVERSITY」のコンセプトは「日本の農と食、食文化の多様性、さらなる拡がり」。チームラボは“日本の食の源泉”である水を巨大な滝のインスタレーションで表現した。滝には日本食の多様性を示す寿司や蕎麦、日本酒など …