電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。さまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛けあわせることで、触って感じる新しいブックカバーを提案していく。
古い洋書のデザインを現代風にアレンジ
古い洋館の本棚に入っていそうな、重厚感のある革張りの洋書。今回はそんな洋書をモチーフにして、アートディレクターの白本由佳さんがブックカバーをデザインしてくれた。革張りのハードカバーをアレンジして制作した、紙製のブックカバーだ。素材が軽やかになったのに合わせ、デザインも現代的にアレンジした。「ブックカバーなので、デザインも本を思わせるものにしたいと思って洋書をモチーフにしています。それを文庫本に合う軽やかなデザインにすることで、ユニセックスで、年代も問わずに使ってもらえるようにしました」。
表紙の中心にある広い箔押しの部分は、洋書ではよくタイトルが入るところだ。「デザインしているうちに鏡みたいだと感じ、途中からアンティークの鏡のデザインも参考にしながら仕上げて行きました」。読む本には、その人の今が投影されていると言われる。鏡のデザインには、そんな「本は自分を映す鏡」というメッセージもさりげなく込められている。
「箔やエンボスは、校正が上がってくるまで、最終的な仕上がりは予想しきれないのですが、今回はとても満足の行くいい仕上がりにしていただきました。手で持った時の紙のざらっとした手触りと箔の質感の違いも面白いですし、本に巻いてみると、いかにも本らしい知的な佇まいになるのがいいなと思っています」。色は120色あるNTラシャの中から年代・性別を問わず、フローズンシルバーの箔も映えるという理由から、濃あいを採用した。
外で本を読むときに使うのはもちろん、家の中に置いてあっても、本棚に入れても違和感のないデザインになった。「箔を押した部分にタイトルを書き込んでもいいですし、自由に使ってもらえたらと思います」。

白本由佳(しらもと・ゆか)
1979年生まれ。静岡県出身。関西外国語大学英米語学科卒業。新村デザイン事務所、ドラフト、POSTALCOを経て2011年よりフリーランス。2014年東京ADC賞、2015年日本パッケージデザイン大賞銀賞〈食品部門〉受賞、JAGDA新人賞受賞。