IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

           

青山デザイン会議

豊かに広がれ「ワーク」と「ライフ」の新バランス

志伯健太郎×永山祐子×柳澤大輔

「ワークライフバランス」の推進が盛んに叫ばれている。だが、クリエイティブを生業にする人にとっては、どこか違和感のある言葉ではないだろうか? ワークライフ「バランス」とは、オンとオフを明確に分ける考え方だ。だが、ものを生み出す時間にオンもオフもない。よいものを生み出すためには24時間考え続けるし、いい企画のヒントはどこにあるかわからないから、いつもアンテナを張っていたい。趣味も遊びも家庭のことも、あらゆる体験が仕事に生き、生活と仕事が一体になって動き出してこそ、充実が感じられるというのが「クリエイター」という人種ではないだろうか。

震災を機に、働く拠点を見直す人や、男性で育休を取る人、複数の仕事を持つ人など、働き方のさまざまな実験やカスタマイズが試みられるようになり、働き方は多様化している。単なる「時短」や「効率化」じゃつまらない。働き方に創造的であることは、人生に創造的であること。今回の青山デザイン会議では、GLIDERの志伯健太郎さん、建築家の永山祐子さん、カヤックの柳澤大輔さんが登場。新しい「ワーク」と「ライフ」の実践に現在進行形で取り組むクリエイター3名の話を通して、新生活の始まるこのタイミングに、改めてクリエイターの働き方を考えます。

デスクの下に住んでいた!?

柳澤 1998年に友人と3人で立ち上げたカヤックは、クリエイターは基本的に裁量労働制です。IT企業ならではのカルチャーもあるかもしれませんが、時間の使い方は個人の自由。17年間やってきて、僕自身はワークライフバランスということを特に意識したことはありません。でもこのキーワードがここまで浸透しているということは、バランスがよくないと感じている人が実際に多いのでしょうね。

永山 私はこれまであまり先のことは考えず、その時々の状況に対応して働き方を変えてきたというのが正直なところです。今日は、働き方について改めて考える機会にできればと思っています。私は大学を卒業してすぐに、青木淳建築計画事務所に入所したんです。青木事務所には「4年制度」といって、全員入所して4年で卒業するシステムがあります。自分も4年間頑張りぬこうと決意して入ったのですが、仕事以外のことを考える時間は一切ないような日々で。男性のスタッフに交じって、仕事が終わるとデスクの下で寝て、起きると同時にパソコンの起動ボタンを押して…という、ほとんどPCの周辺機器の一部と化したような生活でした(笑)。プライベートな時間が本当になかったので、たまに友人と会っても、何を話したらいいのかわからなくなっていたくらい。でも、やりぬいたことで独立できたのも事実なんです。4年が経って事務所を辞めて、実家で資格の勉強でもしようかと考えていたとき、青木さんから仕事を紹介していただいて、それを機に自分の事務所を立ち上げました。2002年、26歳のときです。それからスタッフの入れ替わりはありつつも、事務所は少しずつ大きくなってきました。プライベートでは、2011年の震災直後に結婚し、妊娠、出産を経て、いまは1歳と2歳の子どもを育てながら仕事をしています。出産は、自分の働く時間を見直し、会社の勤務体系も見直すきっかけになりました。

志伯 僕は周りに建築関係の友人が多いんですが、子育てをしながら精力的に仕事を続けている女性の建築家というのはなかなか聞きませんね。

永山 そうかもしれません。でも、ツールが発達したからこそできるようになったことも多いんですよ。建築図面もいまはデジタル化していますし、慣れればスマホ画面で図面チェックもできます。それなら …

あと85%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

青山デザイン会議の記事一覧

青山デザイン会議の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
ブレーンTopへ戻る