「なんでだろう」から始まるグラフィックデザイン
私の母はイギリス人、父はスリランカ人で、名古屋にあった当時の実家は、さまざまな文化が入り交じった資料館のような空間でした。母は英字新聞社の美術記者として働いていて、私の部屋は母の書斎も兼ねていました。
15年位前のこと。名古屋のとある住宅をお借りして、CMの撮影をしました。その家は森の中にポツンと建っていて、ガラス張りのモダンなデザインが印象的でした。撮影のとき、家主の方に「この家は、ミース・ファン・デル・ローエに影響されてつくりました」という話をお伺いしたんです。当時、僕は建築にまったく興味がなく、「ミースって誰ですか?」という感じ。その方が本を見せてくださり、そこで初めてミース・ファン・デル・ローエという建築家の存在とファンズワース邸を知りました。
それから数年経ったとき、同年代の建築家の方が「𡈽橋さん、ミース好きでしょう?」とDVDを貸してくれたんです。以前に家の写真を見たことを忘れていて、ミースと言えば、バルセロナチェア程度の知識。DVDを見て初めて、「あ、あの家をつくった人なんだ」とつながりました。そこからですね、興味を持って、本を読んだり、ネットで調べ始めたのは。それまで断片的にしか知らなかったミースの建築やプロダクト、彼の考え方が一気に結びつき …