NTT西日本×フィックス　石川県出身の哲学者の思想と企業の想いをシンクロさせる

朝もやの田舎道、電車の通り過ぎる高架下、人の気配のない長町武家屋敷や石川四高記念館…。そこに思索にふけりながら歩みを進める男がいる。彼の持つ杖の先からは、一筋の光が。石川県出身の哲学者、西田幾太郎の思想を映像化したという、その意図とは。

「絶対矛盾的自己同一」篇

一つにはなれない
どれだけ速く
どれだけ強く
どれだけ想っていても
一つにはなれない

それは全てが
違うものだから
似ていても
全て違うから

それでもいい
ほんの瞬間
かもしれない
幻かもしれない

あの時
想いが重なった
気がしたんだ

この町もまた
美しい矛盾を
抱えてきた

それは
色や形や声
ではない

想い、としか
言いようのないもの

それでも僕らは
矛盾を抱えながら
光で時を紡いでいく
想いを導く光

NTT 西日本

異質なものを内包するという共通点

NTT西日本は、西日本エリアにおいて固定電話回線と光インターネットサービスの2つのサービスを提供する企業。どちらも速度や安定性に優れているが、携帯・スマホの普及に押され気味なのが課題だ。クリエイティブリレーへの参加には、“通信を守り、普及していく会社”として新たな形で存在感を発揮していく狙いがあった。

そんな同社の1回目のクリエイティブリレーを担当してくれたのは、金沢の制作会社フィックスのディレクター、春木正さんと大坪遼さん。「テーマ選定や演出、トーン&マナーは自由に」というオーダーを受け、金沢を拠点とする制作会社らしく、NTT西日本と金沢という土地柄の2つを掛け合わせて表現していこうと考えた。

オリエンを受け、「より広く速く大量にという通信技術の発展と、記憶や想いを伝えるという人がこれまで積み重ねてきたコミュニケーションの本来の姿」の対比に注目し、そこから石川県出身の哲学者西田幾太郎の思想に着目したという。その「絶対矛盾的自己同一」という思想を理解することは難しいが、「どんなに対立しているように見えるものも、実は同一のものである。己が無になれば、その真理は見えてくる」と解釈した。この思想が、新旧を内包するNTT西日本の事業のあり方に通じると考えた。さまざまな矛盾を紡いでこそ、本当の真理が見えてくるのではないか、と。この想いから、今回の企画が生まれた。

また、演出を担当した大坪さんは、西田幾多郎の思想の本質を「名前それ自体がそのものを表すのではなく、思いや形のないものによってものは表される」と捉えた。NTT西日本の本質もまた、回線をつなげることではなく、人の想いをつなげることにある。CM中では、そのことを“想いを導く光の筋”で表現した。この光は、西田幾多郎が人を導く人物だったことも同時に表している。ロケは金沢の観光名所を中心に行い、能やお茶などの金沢の魅力を随所に織り込んだ。冬は晴れ間の少ない金沢だが、撮影当日は天候に恵まれ、美しい街の姿を収めることができた。

01 企画コンテ

02 ことぶきブライダルハウスことぶき「GOGOコトブキ」篇（演出：春木正）
03 加賀屋グループ虹と海「虹と海」篇（演出：春木正）
04 第一物産 OMEGA「リニューアル赤」篇（演出：大坪遼）

PR ：松本唯史、澤登秀仁
CD＋企画：春木正
企画＋演出＋編集：大坪遼
企画：品野階、松本和奈
撮影：北村真太郎、松平堅成
照明：川崎浩之
編集：石村雄一郎、村田一輝
CG ：若林哲博
MA：片岸知治
音楽：本多周平
NA ：林恒宏
CAS ：藤田泰輔
PM：本間航、藤田泰輔、黒田誠貴、順毛美波、敷田艦
ロケCRD＋ST＋HM＋美術：フィックス

（左）フィックス春木正（はるき・ただし）
1971年生まれ。ムービーカメラマンを経てディレクターへ転向。CM、ショートムービー、MVなどを企画、演出。

（右）フィックス大坪遼（おおつぼ・はるか）
1986年生まれ。高岡短期大学専攻科金属工芸コース卒業。2014年の年末よりCMなどを企画、演出を始める。