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青山デザイン会議

MAKER⇔大企業 開発の新スタイル

井上裕太(TBWA HAKUHODO)×高萩昭範(Moff)×萩原丈博(ソニー)

大手メーカーの社内にイノベーションラボが新設されたり、ハッカソンスタイルのイベントが老舗企業にも広がるなど、大企業にスタートアップの精神を取り入れようとする動きが活発になっている。3Dプリンタの登場を契機に、ものづくり産業にインパクトを与えたメイカームーブメント(無数の個人がものの設計と流通を担う)は、大企業の中のエンジニアたちの力を開放し、個人やスタートアップと大企業の協業という新しい開発スタイルをもたらした。こうした動きと呼応するように、広告界でも、広告会社や制作会社が社内にラボを設け、ものづくりに乗り出すケースも増えている。

個人のMAKERの力はこれから大企業のものづくりをどう変えていくのか、生まれた発想をビジネスの軌道に乗せていくには何が必要なのか、広告会社がこうした流れの中で担える役割は何か。日本発のスタートアップとして、世界で先陣を切って成功を収めるMoffの高萩昭範さん、ソニーの社内スタートアッププロジェクト「MESH project」のリーダーである萩原丈博さん、TBWA\HAKUHODO\QUANTUMで大企業とスタートアップを結ぶことに取り組む井上裕太さんの3人のディスカッションから、その未来の姿を予測する。

大企業とスタートアップが手を取る理由

萩原 昨年4月から、ソニーの新規事業創出部で「MESH project」を担当しています。MESHは簡単にいうと、ブロック状の電子センサーを使って、ユーザーが自由に簡単に電子プラットフォームを構築できるシステムです。

井上 このセンサー、見た目は本当にシンプルなブロックですよね。レゴみたい。

萩原 Webやアプリと連携して、LED、カメラ、電源スイッチ、レコーダー、スピーカーといったさまざまな機能を、家具や生活雑貨などのあらゆるアナログなプロダクトに持たせることができます。アイデア次第でいかようにも使えます。例えば傘立てにつけておいて天気予報アプリと連動させ、雨予報の日に玄関に立つと、自動音声で傘を忘れないように知らせてくれるとか。冷蔵庫につけておいて、外出先からカメラで中身をチェックできるようにするとか。まだ試作段階ではありますが、アメリカのクラウドファウンディングサイトIndiegogoで、プロジェクトを進めている最中です。

高萩 この形で製品化されるんですか。

萩原 さまざまな用途に適した形ということで考えた形状ですが、デザインはニーズに合わせて変えていくかもしれません。僕らが提供するのはプロダクトではなく、体験のプラットフォームですから。高萩さんのことは、2013年に開催された日本のスタートアップ支援イベントでお見かけしたことがあるんですよ。Moffのプロトタイプ版を発表されていて。

高萩 まだ、手首に巻くタイプではなく、手に持つタイプでしたよね。誰にも理解されなくて辛かった時期です(笑)。

井上 そうだったんですか? 今のMoffの形になって発表されたのが2014年2月、クラウドファンディングのKickstarterにプロジェクトを掲載したのが3月、翌月には目標額の4倍の出資を集めて、爆発的な勢いでニュースになりましたよね。

高萩 今までにないものを作っているわけですから、当時は理解されなかったのも仕方ないんですけどね。Moffは、手首に巻くウェアラブルデバイスです。手首からすべての身体の動きを感知し …

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