アイデアとは新しい組み合わせである
『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を初めて手にしたのは、美大受験の予備校に通っていたとき。同じ予備校で尊敬していた友人に。この本いいよ」と薦められたのがきっかけです。その友だちはアートやデザインに詳しいだけではなく、流行の半歩先を颯爽と走っているような人。感度が高く知的で、今から30年以上前に「デザインは表層的なものではなく、経済も動かす」といった話をしていたほどです。そんな友人がすすめるなら間違いないだろうと、買ってみました。
デザインの見方
企業名をブランド化し、記憶として残りやすくするロゴ。単純にアルファベットを並べた文字とロゴとの違いはどこにあるのか。たとえばお馴染みの西友や無印良品のロゴは、とくに文字を加工しているわけでもないのにそれと認識されています。文字からロゴへと変容する、目に留まるものへと進化する境界。デザイン事務所に入社したばかりの僕にはその境界がまったく理解できませんでした。ロゴを上手にデザインできるようになりたくて、3年間自己流の修行を重ねました。国内外の優れたロゴのサンプルを集め、それを手本にひたすら鉛筆でなぞり、論理的に分析・考察するというもので、数多くあるロゴの中で強く心に刺さったのが、アートディレクターの八木保さんが手がけたファッションブランド「INDIVI」のロゴでした。
既存の書体にNとVの横幅を少し広げ、その分なりゆきで下方へ線をすっと伸ばす。ほんの少しだけ文字を変えただけなのに …