時代感と映画の美意識が共存した小道具のデザイン
私はグラフィックデザイナーという肩書で仕事をしていますが、元々は映画監督を目指していました。大学では映画制作を学べることを理由にデザイン学科を専攻。
企業名をブランド化し、記憶として残りやすくするロゴ。単純にアルファベットを並べた文字とロゴとの違いはどこにあるのか。たとえばお馴染みの西友や無印良品のロゴは、とくに文字を加工しているわけでもないのにそれと認識されています。文字からロゴへと変容する、目に留まるものへと進化する境界。デザイン事務所に入社したばかりの僕にはその境界がまったく理解できませんでした。ロゴを上手にデザインできるようになりたくて、3年間自己流の修行を重ねました。国内外の優れたロゴのサンプルを集め、それを手本にひたすら鉛筆でなぞり、論理的に分析・考察するというもので、数多くあるロゴの中で強く心に刺さったのが、アートディレクターの八木保さんが手がけたファッションブランド「INDIVI」のロゴでした。
既存の書体にNとVの横幅を少し広げ、その分なりゆきで下方へ線をすっと伸ばす。ほんの少しだけ文字を変えただけなのに …