2014年11月、グッドデザイン賞の大賞および各賞が発表された。審査委員長を務めた深澤直人さんに今年度の審査講評、デザインの未来について聞いた。

深澤直人(ふかさわ・なおと)
プロダクトデザイナー。卓越した造形美とシンプルに徹したデザインでヨーロッパ、北欧、アジアなど世界を代表するブランドのデザインや国内の大手メーカーのデザインとコンサルティングを多数手がける。デザインや製品開発の視点から企業ブレーンも務めるなど取り組む領域は多岐にわたる。21_21 Design Sight ディレクター。良品計画アドバイザリーボード。マルニ木工アートディレクター。多摩美術大学統合デザイン学科教授。2010~2014年グッドデザイン賞審査委員長。第5代日本民藝館館長。主な著書に「デザインの輪郭」、作品集「NAOTO FUKASAWA」、「デザインの生態学ー新しいデザインの教科書」(共著)、「デザインの原形」(共著)、「THE OUTLINE 見えていない輪郭」(共著)など。
モノづくりに対する姿勢の高さに感じ入る瞬間
今回のグッドデザイン賞の審査は、モノを生み出そうとする、日本の産業の底力や技術力を改めて実感することができました。受賞作が1200件以上選ばれるのは、それだけ日本の製品開発能力の高さが窺えます。プロダクツをはじめ建築やアプリケーション、コンテンツ、サービスなど各分野における成果、デザインの充実はとても納得できるものでした。色や形といった一般の概念としてある装飾的なデザインではなく、「モノ」や「コト」が持つ本質的な形態や姿に行き着こうとする姿勢が多く見られました。そこでは、モノ自体が持つ機能が進化して、見た目のデザインが姿を消してしまうことも少なくありません。
また、グッドデザイン大賞に選ばれたデンソーの医療・医薬用ロボットが象徴するように、最終的な目的に到達するうえで必要な機能それ自体を高め、洗練させるための、デザインとエンジニアリングの境界のない高次なセッションも増えてきたと思います。それはデザインの良し悪しの判断よりもモノづくりに対する姿勢の高さに感じ入る瞬間でした。デザイナーだけがデザインを考えるのではなく ...