CDやDVDジャケットのパッケージデザイン、アーティストグッズの企画・製造販売、展覧会やイベントの企画・運営などエンタテインメント領域に強みを発揮するソニー・ミュージックコミュニケーションズ(以下SMC)。案件ごとに社内のスペシャリストをアサインし、最適なチーム編成で質の高いクリエイティブを提供している。
音楽業界に留まらない多様性
社名からソニー・ミュージックエンタテインメントのインハウスエージェンシー、あるいは音楽やエンタテインメント領域に特化した会社のように思われるが、それに留まらず、さまざまな業種のコミュニケーション戦略を手がけている。その領域も空間プロデュースや設計・施工、アプリ開発など、ソリューションは多岐にわたる。たとえば、横浜駅西口の商業施設「ジョイナス ザ・ダイヤモンド(以下JD)」のトータルブランディングが挙げられる。
2012年年末に、担当者から向こう3年にわたるトータルブランディングの相談を受けた。一気にではなく、順次改装していく中で、どうやって鮮度を保ちつつ、ユーザーにコミュニケーションを展開するか。それまで各担当者が進行していたビジュアル制作から販売促進計画を、館の改装含めリニューアルしていく大規模な計画だった。SMCはリブランディングの戦略をベースに、社内の各部門に在籍するスペシャリストでチーム編成できる強みを活かして、コミュニケーションをワンストップで展開、ブランドパーソナリティ、CI、VI開発にはじまり、CMやPV、フロアガイド制作、Webサイト、空間デザイン、館内BGMやアナウンスにいたるまで、きめ細かくディレクションしている。
「他の商業施設と比べてJDは何が違うのか?全国の都市(街)に比べた横浜の特徴は?“らしさ”を一言で表そうとしても受け止め方は違います。SMCブランディングチームとクライアントで徹底的に議論し、そのギャップを埋める作業に3カ月間費やしました」(CD 伊藤弘康さん)。
よりよいものをつくるため、クライアントとともにブレストするのがSMC流。コミュニケーションの地盤を固め、進むべき方向性を探った。そして、帰着したコンセプトが「いつもを、ステキに、かえていく。」だ。「JDは横浜に根ざし、横浜の人たちと共に歩んで来た歴史があります。“いつもそこにあるという安心感を大切にしつつ、でも、いつ立ち寄っても何かうれしい発見のある場所に変えていきたい”。チームで導き出した施設の思いを言葉にしました」(C/Pl 代田ケンイチロウさん)。
他領域で活きるエンタメのノウハウ
リニューアルは通常営業しながら段階的・継続的に行われる。SMCはターゲットを細かく設定しながら、JDを擬人化し、3年かけてお客さんとともに成長していくストーリーを各施策の軸に据えた。改装の大きな部分では、2013年10月に4階のファッション中心フロアーのリニューアル。「リブランディングの全体コンセプトをベースに、シーズンビジュアルから販促施策までトータルでアートディレクションを実施しています。館内だけでも媒体がたくさんあるので、ユーザーへの伝わり方を考え、細かくコミュニケーションの仕方を変えています。」(AD 大仁田弘志さん)。
2014年4月には2・3階がオープン。そこでは「PLAY EDIT.」というコンセプトを提示した。PLAY EDIT.には、今まで入らなかったショップにも行ってみて、ジャンルレスに好きなアイテムを見つけ、自分らしく編集して楽しむことで、新しい喜びに出会ってほしい、というメッセージが込められている。同施設のメインターゲットである20~30代前半の女性が集まるこの階層はいわば心臓部。コンセプトの世界観を疑似体験できるスペースとして2階特設広場に、最新のインタラクティブ・デジタルサイネージ「M!TENE(ミテネ)」も設置した。その他も、季節ごとにさまざまな施策を展開しているJD。中でもクリスマスは『Heartlink Christmas』と称してさまざまな企画を展開。ここでは、スペースプロデュースチームがジョインし、コンセプトから販促企画・館内装飾・施工管理含めたトータルプロデュースを担当している。
クライアントと同じ目線で考え、ゼロから考えるSMCのブランディング設計により、SMCは今後も音楽・エンタテインメント業界で培ったリソースやノウハウで、他の業界や領域に足を踏み入れ、新しい価値を次々と生み出していく考えだ。
03 2.3F フロアーリニューアルオープン「PLAY EDIT.」
04 4F フロアーリニューアルオープン
05 Heartlink Christmas
06 Interactive Signage「M!TENE(ミテネ)」
07 情報誌「Vitto」
08 オフィシャルHP