大学を社会人生活の入り口と捉え、プロとして活躍するために欠かせない体験や考え方の部分を重視する田頭章徳さん。クリエイティブ・ゼミ訪問の第5回目は、そんな田頭さんが率いるゼミを紹介する。
家具デザインを専門分野に持つ田頭章徳助教の授業では、技術を学ぶ以前に大切にしていることがある。例えば、大学2年次に行うエクストリームシッティングと名付けられた授業では、「座るものを作ろう」という課題が出される。学生たちは、身の回りで座れそうな、ありとあらゆるものへのシッティングを試みる中で、面白い「座る体験」を発見していく。「プロと学生で唯一平等なのは、体験で得られる感覚です。キャリアや技術の差にかかわらず、体験しないと分からないことはある。だから、まずは座るもの=椅子という概念を外して考え、色々な体験をしてもらいます」。
そう考えるのは、学生たちが技術ばかりを学び、スキルやスタイルを身に付けて満足することに危惧を感じているからだ。「全ての創造の根っこになる考え方の部分を鍛えないと、何もできなくなりますからね。また、全員が全員、卒業後にデザイナーになれるわけではない。そうなった時に ...