自身の監督作品が、2014年に世界的な映画祭「ロカルノ国際映画祭」の新鋭監督部門にノミネートされた五十嵐耕平さん。世界から高い評価を得ながらも、「映画監督になりたいと思ったことはない」と語る。
状況が生む映像を、撮り続けたい
初監督作品「夜来風雨の声」は、大学在籍中に友達と何も決めずに撮った映画だと言う。「お金はないけど、人と時間と場所はある。そんな環境で友達と集まって、その時のその場所で映像を考えて作っていきました」。話し合いで出た意見の中から、最もありえない選択肢を選びながら完成させたという作品は、気が付けば74分の大作になった。せっかくだからと、「シネマ・デジタル・ソウル」へ応募したところ、韓国批評家賞を受賞する。
しかし、賞や評価に対しては距離があったと五十嵐さんは話す。「評価される映画を作ろうとは思っていません。あくまでも映画の持つ可能性を探りたかった。監督が全部決めるのは嫌なんです。現場に行って、皆がその時のその状況で感じて出てきた意見に可能性がある。だから ...