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青山デザイン会議

新しい協働~障壁を超えたクリエイティブ

栗栖良依、塩瀬隆之、村川拓也

鋭い知覚やなにかが特化して優れた能力を持つ障がいのある人と、他分野で活躍するアーティストや企業がコラボレーションすることで、新しい表現を生み出したり、商品を開発したりする動きがここ数年増えてきました。社会の常識や価値観を越えたこうしたクリエイションや商品にはっと驚かされることがあります。そこには、成熟社会の中でいままで見落としていた多様性、既成概念をジャンプする新しい突破口があるように思います。また一方で、バリアフリーやユニバーサルデザインなど障がいのある方にも快適に生活できるクリエイションやプロジェクトも増えてきました。

より一層のサービスの充実や認識のズレの解消など真の意味で共存共栄が求められています。いずれは障がい者や健常者という言葉自体がなくなり、多様性が“常識”となる社会を目指すためにクリエイティブがすべきこと、できることとは?アーティストの技術と経験を掛け合わせ、障がいのある方の芸術表現を高めた企画展「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」総合ディレクターの栗栖良依さん、『インクルーシブデザイン』の共同編著者である京都大学総合博物館 准教授の塩瀬隆之さん、そして障がいのある人とその介助人の一日を描いた演劇で話題を集めた演出家の村川拓也さんの3人が話し合います。

突出した感覚や独特の感性を作品に

栗栖「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014」(8月1日~11月3日)は、鋭い知覚や能力を持つ障がいのある方と専門知識・技術を持つアーティストが出会い、新しい芸術表現を生み出す場として開催しました。「パラ」から障がい者アート展を想像されがちですが、アール・ブリュットのようなアウトサイダー・アートではなく、目の不自由な方の突出した触覚など感覚に注目したアートイベントでした。

村川 感覚に注目した作品というと?

栗栖 たとえば、「music for the deaf」は、聴覚障害のあるダンサーが参加した作品です。彼らは、普段は少し聞こえる人の動きを見たり、低音の振動を感じて踊っています。今回は、音楽を電気刺激に置き換えるデバイスをプロのクリエイターが開発し、それを装着して踊りました。ほかに、全盲の方と詩人がコラボレーションしたサインや、障がいのある人たちが織った織物を素材にプロのアーティストが制作した立体作品など、協働の形も、作品も、多種多様な内容です。

塩瀬 準備期間はどのくらいですか?

栗栖 横浜市の事業として4月からスタートだったので、約3ヶ月です。新しい表現を生み出すにはやはり時間が足りないので、今回はまずデモンストレーションを見せるところまでですね。次の3年後には、新しい芸術表現を生み出したいです。

村川 もともと、地域に根ざした活動をされているんですね。

栗栖 地域コミュニティなどで、異文化を持つ人同士を繋げて新しい価値を生み出す活動をずっと続けています。4年前に右脚に悪性線維性組織球腫を発病して障害者手帳を持つようになり …

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