1ピクセル、1フレームの妥協なくCG動画制作を中心にハイクオリティの映像づくりをストイックに追求するピュアピクス。CGとリアルを熟知した技術は、未知の映像を作り出す。
1 ピクセルの重みを忘れてはならない
テレビCMや企業PR映像、ゲームなどのCG合成・編集を得意とし、映像をトータルでコーディネートする映像集団ピュアピクス。鹿のカクカクシカジカが登場するダイハツ「ムーブ」のCMや積和不動産「お部屋探しMAST」のCMなど実写とCGが融合したクオリティの高い、自然に融合した映像表現に定評がある。
プロダクトデザインや3DCG・ゲーム映像制作の経験を積んだ映像ディレクターの川鍋政道さんが1999年に設立。当初、3人ではじめていたが、仕事内容の規模が大きくなってきたことから、スタッフを増員することに。若手3Dデザイナーやエフェクト制作に強い女性スタッフ、さらにはテレビ番組のアシスタントディレクター経験のある人材を加え、外資の金融会社に勤めていた橋谷元彦さんを経営戦略の中心に据え、現在は8人体制。川鍋さんはクリエイティブ制作に専念し、陣頭指揮を執るかたちでチームを引っ張っている。
映像は1フレーム、1ピクセルによって伝えたいメッセージが変わることがある。それを見落とすことなく、無駄のない映像をつくるために、1フレーム、1ピクセルの重みを忘れてはならない。そういうストイックな直向さ、純粋さを、映像の道標にしようと社名をピュアピクスと命名した。
全カットフルCG制作はもちろん、実写撮影の場に立会いのもと、CG、エフェクト、実写合成作業まで行っている。同社が昨年から大きく方針を変えたのは、実写の映像を強化したことだ。「CGに特化した制作者は、虚構の映像を本物と認識してしまい仮想現実の世界で物事を判断してしまうことがあります。そのため、CG制作者のみでチームを構成するつもりは一切なく、女性を美しく撮るにはどういう明るさがいいのか?など実写撮影の目線を理解してほしいのです」(川鍋さん)。実写もCGも両方の視点から考えられる人材を一人ひとり育て上げていきたいという。チーム内は、1つでもいい点があればそこを引き上げようと、個性を尊重する風通しのいい雰囲気を大切にしている。川鍋さんのストイックな姿勢がチーム内に伝播し、妥協を許さない向上心の高いメンバーが集った。実務に関しては、教師と生徒の間柄のように川鍋さんが教えているが、流行に関しては、若い世代のほうが鋭敏。そのときは立場が逆転して、川鍋さんが吸収する。いい循環が生まれ、チーム内のコミュニケーションはとてもスムーズ。いずれは各自が追求したいアニメ部や実写部などを事業化する構想もある。個性を伸ばしながら全体で一つのベクトルに進んでいきたいとしている。
中性的な感覚を大事にする
世界に向けWeb中継にて一斉発信された新型車FCV(燃料電池自動車)発表においても、限りある制作期間においてどの手段が映像クオリティを出せるのか、またどういったカメラワークが商品の魅力を引き出せるのかを突き詰めた。レンダリングミスが許されない時間枠の中で必要最小限のフレーム数を使い、未だ見ぬ実車両を表現力と厚みのある映像表現をすることは容易ではない中、これまでの経験を活かし、CGとリアルを熟知した上で、未知の映像を作り出した。
CG制作で常に意識している点について川鍋さんはこう語る。「女性がいいという映像と男性がいいという映像。その両方に響く中性的な感覚を大事にしています。二つ目は好奇心を持つことです。普段誰もがスルーしてしまう情報にこそ、新しい視点が生まれると思うので貪欲になんでも吸収しています。三つ目は、新車発表の映像でも目指しましたが、小さいときに見た映像が大人になっても覚えているような、一生記憶に残る映像をつくりたいですね」。
川鍋さんは記憶に残る映像をつくると同時に、記憶に残る会社にもしたいという。去年までは下請けとして影に隠れていたが、ようやく表舞台に立つことができた。大手プロダクションに負けないクオリティの高い品質を担保して、前へと進む考えだ。「スタッフが毎日気持ちよく仕事ができるよう、全員で協力しあい、会社の規模を大きくしていきたい。また同業者とも協働、連盟して仕事の幅を広げていきたい」(川鍋さん)。同社は12月に事務所を拡張移転、今後は地方への拠点や海外展開を視野に新たな映像表現の道を模索している。
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