「がんばる母さんやめました」自分らしさを探る「卒母」の考え方
『卒母のためにやってみた50のこと』(大和書房)という本に出会い、ページを繰り出したら止まらない。手書きの文字とイラストで構成されているたたずまいもユニーク――著者でありグラフィックデザイナーの田中千絵さんに話を聞いた。
デザインプロジェクトの現在
水戸芸術館の現代美術ギャラリーで、鈴木康広展「近所の地球」が10月19日まで開催されている。身近なものをユニークな視点でとらえ、大きな広がりのある表現へと昇華させていく鈴木さんーー興味津々で取材に行った。
ある審査会で鈴木さんとご一緒し、コメントに独特のやさしさとユニークさが同居する魅力的な方と感じていた。今回の展覧会は、その鈴木さんの、過去から現在、未来へとつながる作品が一堂に見られるというのだから、行かないわけにはいかない。会場でお会いした鈴木さんは、いつものようにボーダー柄のTシャツと、涼やかな笑顔で迎えてくれた。早速、説明を受けながら取材に入る。ひとつひとつの作品について、丁寧に説明してくれる。巡っていくと、会場構成も作品も、予想以上に豊かさに充ちていて、時間が足りない!しかも、あふれるように紡ぎ出される鈴木さんの言葉は、詩のように美しい。観るに留まらず、身体を動かしたり、心身で感じたり̶̶会場を出る頃には、ものの見方がシャッフルされる爽快感があった。
さて、実際の展示はどうか。入り口で渡されたのは、会場構成と作品の名前を配したA3サイズの紙。鈴木さんの手書きで、絵と文字が綴られていてわかりやすい。繊細でありながらどこかユーモラスな筆致に惹き込まれてしまう。そして、鈴木さんと一緒にいざ会場内へ。導入部にある「無限の回廊」と題された空間は、両脇に白いブロック塀が配してある。路地を歩く感覚で進んでいくと、天空の照明が変化するさまを体感できる。暗闇から淡い光が射してきて夜が明け、清澄な青空を想像させるような昼の光に充ちていく。やがて徐々に弱まっていって再び暗闇に。一日の光の循環を表現しているという。路地の突き当たりには、ベンチがぽつんと置いてある。「人がその場の一部になるための道具がベンチ。だから、会場の何箇所かにあえて置いた」という鈴木さんの言葉を信じ、座ってみると不思議、不思議。風景ががらりと変わる。視線が下がり、腰が据わると、身体が場に馴染んでくる。場にあずけた心身は、さまざまなことに想像を馳せている。
続く部屋で、目に飛び込んできたのは…