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カンヌライオンズ2014に見る世界の広告

優れたクリエイティブを生み出す秘訣はパッションにある

キース・ラインハート

カンヌライオンズは広告界の若い人材育成に積極的だ。広告会社在職中の28歳以下の若手クリエイター、および企業の30歳以下のマーケターを「ヤングライオン」と称し、アワードを制定、また特別なプログラムを数多く用意している。ここでは6月16日に行われた「Master Class」のセッションを紹介したい。DDB Worldwide Communications Group, Inc.のChairman Emeritusキース・ラインハート氏が登壇。「WHY PASSION?」をテーマに30分の講演と、Q&Aを行った。

キース・ラインハート
The DDB Worldwide Chairman Emeritus。DDB Worldwideは90カ国に200のオフィスを持つ世界最大、かつ最もクリエイティブなエージェンシーネットワーク。

成功をつかむための原動力

さまざまな人に聞かれるが、優れたクリエイティブを生み出す秘訣、広告界で成功する秘訣、それらすべてに最も重要なことはパッションだと思う。20世紀におけるビジネスの巨人、ビル・ゲイツも、高校に入った時にはコンピューターに対するパッションを持っていた。私も同じように、いつも広告に対するパッションを持っていたし、今も持っていると自負している。

私が高校生の頃の話をしよう。私は小さいコミュニティで育った。インディアナの小さな町、住人は2000人ほどしかおらず、皆、テレビも映画もダンスにも興味が無い町だ。私は当時、クラフトやジェネラルミール、キャンベルスープといった大手企業が店などに置いている、ポストカードを集めて部屋に飾っていた。それらはイラストレーションが美しく、クリエイティブで、いつも私は胸をときめかせていた。しかし当時私は何も広告ビジネスについて知らなかったし、町の人たちも知らなかった。

高校を卒業して就職活動を考えた時、私はニューヨークに出てあこがれの広告界で成功をつかみたいと考えた。そして3人の友人と共に、4台のトラックと共にニューヨークに渡った。何の才能もコネクションも持たずに。

JWT、マッキャンなど多くの名だたる広告会社の門を叩き、仕事を探していると言ったが、「as What?(それで何?)」と言われて終わり。結局就職活動はうまくいかず、故郷のインディアナに戻った。そこで私は、小さなコマーシャルスタジオでノンペイド・インターンをはじめた。

しかし私はあきらめなかった。いつかインディアナで最も大きな広告会社で働こうと志し、何度も求人の問い合わせをした。しかし一度も向こうからの連絡はなく、ジョブインタビューの機会すら得られなかった。それを3年間続けていたところ、ある日電話がかかってきた。「君は私たちのことをよく知らないかもしれないが、私は君が問い合わせしている広告会社のCEOだ。君からは5回も履歴書を送ってもらって、君のことをよく学ばせてもらったよ。そこで改めて、採用を検討することにした」。広告界で働くパッションを片時も忘れず、望み続けた結果だ。

いざ会社に入ると「コピーライターの職ならあるよ」と言われた。「何でもやります!」、私はそう言って ...

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