企業が、あるいはNPOなどの団体による社会課題の解決をテーマとしたコミュニケーション。近年はSNSでの展開を見込んだ表現も増えている。電通ソーシャルデザイン・エンジンに席を置く横森祐治さんは「いいメッセージから仕組みへと評価が変わっている」と話す。
01 TERRE DES HOMMES
「SWEETIE」
評価されたのはプロジェクトや仕組み
ここ2~3年、話題を集めていたソーシャルグッド。昨年は、フィルム部門でグランプリを獲得したMetro Trains Melbourneの「Dumb Ways to Die」が非常に注目を集めましたが、今年はその印象が少し薄くなったような気がしました。数として少なくなったというよりも、企業がこうした課題に取り組むことはもはや当たり前のことになったのかもしれない。それが当然のこととしてあった上で、どれくらい世の中に広まったのかという点が重視されているような印象を受けました。
僕はこれまでソーシャル・デザイン・エンジンという部署にいたこともあり、今回のカンヌでは特に社会貢献度の高いアイデアに贈られるグランプリ・フォー・グッド部門に注目しました。その中で大きな変化だなと感じたのは、もはやいい映像表現、いいメッセージだけでは評価されないということ。昨年の「Dumb Ways to Die」は社会的なメッセージとしても大きいけれど、アニメーションとしての面白さもあったと思います。それが今年は課題解決のためのアクションやプロジェクトがノミネートされており、それらが評価されています。
グランプリ・フォー・グッドのグランプリは、以前から話題になっていたTerra Des Hommes という団体の「Sweetie」。子どもの人権を守る団体で、児童買春を取り締まるため、オンライン上にSweetieという架空の女の子をつくり、おとり捜査を実施。そこにアクセスした人を1000人も特定し、何カ国かでは逮捕にいたり、犯罪防止が強化されたというもの。ここで興味深かったのは、以前であればこうしたキャンペーンはメッセージ重視でしたが、呼びかけではなくアクション。さらにテクノロジーを使って展開したということ。従来、ソーシャルとテクノロジーは離れたところにある印象がありましたが、その可能性を切り拓いていると感じました。
同じく以前から話題を集めていたNPOのNot Impossible が実施した「Project Daniel」もまさにプロジェクトであり、3Dプリンターというテクノロジーを使っている。そういう意味では、ただ伝えるだけではなくアクションがあり、その背景にはテクノロジーがあるというのがひとつの傾向としてあったように感じます。
これまでと違うアプローチで言えば、Amnesty Internationalの「Freedom Candles」も新しい試みでした。人権侵害を啓発するために ...