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カンヌライオンズ2014に見る世界の広告

キーワードは「ヒューマニゼーション」―チタニウム&インテグレーテッド部門の審査を終えて

木村健太郎(博報堂ケトル)

フランス・カンヌで行われたカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(カンヌライオンズ)。本年度は部門数もまた増え、日本からの受賞は全部で57本。昨年の33本、一昨年の50本に比べても大幅な増加となった。これに先駆けてイギリス・ロンドンで行われたD&AD賞において、日本の全受賞作品数は40本。イギリス、アメリカ、フランスに次いで4番目の受賞数となっている。

カンヌライオンズで日本の受賞作の中で今年最多の15のライオンを受賞したホンダ インターナビの「Sound of Honda / Ayrton Senna1989」は、D&AD賞では最高賞であるブラック・ペンシルを受賞。デザインにおいても、デジタルテクノロジーにおいてもクラフト色の強かった日本だが、この作品は日本のクリエイティビティの新しい在り方を世界に示した。今号ではカンヌとD&ADを中心に特集。今年の審査ではどのようなことが語られたのか、また作品を通してどんな課題やテーマが見えてきたのか。審査員として、また一般から参加した人たちとともにこれからのクリエイティブのあり方を考えていきたい。

今年10周年を迎えたチタニウムライオン、いまやカンヌの中でも広告のあり方を示す重要な部門である。本年度審査委員を務めた木村健太郎さんはこの審査を経て、また今年のカンヌを体験し、ひとつのキーワードを導きだした。

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©gettyImages

審査基準を議論する審査

「ここにいるみんなは、多くの国際賞審査をやってきているだろう。しかしだからこそ、アーリージャジング(最初から評価を決めつけること)をさけてほしい。今の認識は議論を通じて変わっていくはずだから」。

カンヌCEOのフィリップ・トーマス氏のこのあいさつで、チタニウム&インテグレーテッド部門の審査は始まった。続いて、インド人の審査委員長プラスーン・ジョシ氏が審査方針についてこう言った。「チタニウムの審査基準はあえて決めない。自分たちで議論して決めよう」。

この言葉を聞いたときに、僕は2007年に参加したプロモ部門(現プロモ&アクティベーション部門)の審査を思い出した。当時のブラジル人の審査委員長が最初に発した言葉も全く同じだったからだ。当時のプロモ部門はできて2年目のカテゴリーだったため、この「基準は言わない」発言は審査員たちを激しい混乱に陥れたが、結果この言葉が、4日目にカテゴリーの基準に関する建設的な議論を引き起こし、「アクティベーション」という概念のベースとなる審査基準を生み出したのだ。

チタニウムライオンは、今年10周年。2003年にフィルム部門の審査委員長だったダン・ワイデン氏が、当時フィルム部門でもサイバー部門でも評価しようがなかったBMW Filmsを評価するために作られた。その後2005年にインテグレーテッドキャンペーンを評価する部門としてエントリーの募集が始まり、2006年に「業界を前進させる革新的なもの」という現在の基準になった。チタニウムとインテグレーテッドを同時に審査するのはそういった歴史があるからだろう。

Move forward

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01 Volvo Live Test Series /「The Epic Sprit」
©gettyImages

何が業界を前進させるのか。審査3日目の午後にこの議論はやってきた。全員でビデオを見て9段階で投票した結果、平均点で5以上のスコアがついた36作品について、下から順にどちらの部門のショートリストに振り分けるか、それとも落選させるかをひとつひとつ丁寧に議論しながら投票していったときだ(僕らの提案で、チタニウムとインテグレーテッドは、今年からショートリストから分離することになった)。

この時点で2位に1点以上の大差をつけて圧倒的な1位だったのがVolvoのLive Test Series。さらに8位にもCM単体でVolvoのThe Epic Spritが入っている(同作品)。この時点で日本からのエントリーで残っていたのはふたつだけ。Sound of Honda(電通)が6位。Rice-Code(博報堂)が21位だった。何となく今年はVolvoかなという雰囲気だった。事実、カテゴリーを超えたベストの先行指標としては、Volvoはニューヨークフェスティバルのベストオブショウにも選ばれている。

しかしそのVolvoの議論になったとき、ひとりの審査員がこう言った。「Volvoは決してチタニウムではない。2006年にチタニウムをとった ...

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