クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。第63回目は『murmurmagazine』編集長であり、文筆家、詩人でもある服部みれいさん。自身の仕事や人生に影響を受けた本を聞いた。
『自然のレッスン』
北山耕平著(筑摩書房)
都会にいても、田舎にいても、どこにいたって「自然」を自分の中央にすえて生きる。そんな生き方の知恵を紹介していきたいと、2008年に創刊したのが『マーマーマガジン』だが、その企画時のアイデアの原点が、この本。長い放浪を経た著者が、ネイティブアメリカンをはじめ、先人たちから得た知恵を編んだもの。感情の吐き出し方/ひとりぼっちになることが大事/姿勢の奇跡/買い物(食料品の)に行く前に/疲労で自分を知る/背骨の緊張をとく秘法/断食はどうしても欠かせない……。こころ、からだ、食べものについての、「古くてあたらしい」知恵が、胸に迫ってくる。わたしがこの本に最初に出合ったのは、2001年だったが、今春文庫化されて、あらためて読んだところ、なんとまあ、あらたな発見の多いこと!同時に、自分がどれだけこの本に影響を受けたかにも驚愕した。何に驚いたか?わたしがつくっている本への影響の深さもだが、何より、この「レッスン」によって、わたし自身が、自由に、かつ幸福になっていることにあらためて気づかされたのだ。「自然」とつながる生き方を探る、そんな本づくりを続けて、その恩恵を最もこうむったのは、わたし自身かもしれない ...