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青山デザイン会議

動画、プロジェクション...映像はどこまで冒険できるか

齊藤康太/杉本誠司/森内大輔

人は初めに絵でコミュニケーションをしました。人類最古の洞窟壁画は約4万年前からあり、そこから絵文字や象形文字が生まれました。もともと、絵のほうが文字よりも伝達手段として歴史が長く、人にとって自然な意思疎通はイメージコミュニケーションなのかもしれません。いままで情報やコンテンツに文字が使われていたのは、映像や画像を伝達する技術がそこまで達していなかったから。そういうふうにも考えられます。21世紀のいまや、デジタル技術の進歩によって実現可能になりました。動画の制作や視聴も日常となり、どこにいても映像を目にする環境が整っています。映像技術も発達しており、裸眼3Dやプロジェクションマッピング、高画質4K8Kと表現の幅も広がりました。生活者の接点として企業もCM以外にオンライン動画の制作に積極的になり、それが特別なことではなくなっています。視聴デバイスや視聴スタイルが変わっている中で、これからますますニーズが高まるであろう映像。その可能性と表現のいく先について、初音ミクのライブなどを手がける映像演出研究家の齊藤康太さん、ニコニコ動画の生みの親の一人、二ワンゴ代表取締役の杉本誠司さん、日本におけるプロジェクションマッピングの先駆者である森内大輔さんの3人で考えてみました。

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切磋琢磨の連鎖がより高みへ

齊藤 映像や空間演出のラボチームstudio TEDを主宰しています。ホログラム技術の先駆けであるドイツのMUSION社で2年間、先端テクノロジーを学び、帰国後は主にライブステージでの、ホログラフィック技術の空間演出をしています。Perfume LIVE、auPerfectSyncLIVE、初音ミクのライブHATSUNE APPEARANCEでは、「Eyeliner ™」という、実在のモノや人物と3DCGや映像が同一ステージ空間に現れる、国内唯一のエンターテイメント技術を提供しています。

森内 私はNHKの映像デザイナーとして、紅白歌合戦のステージ設計などの舞台美術やCG映像のディレクションを手がけてきました。4年前からNHKエンタープライズに出向し、東京駅や鶴ヶ城のプロジェクションマッピングや、4Kや8Kなど大型映像コンテンツの制作を担当しています。単なるギミックを越えて、環境や生活に作用する映像コミュニケーションを意識しています。

杉本 ニコ動を運営するニワンゴの代表をしています。お二人のように自らコンテンツを生み出すというより、コンテンツの生まれてくる土壌の整備に気を配っています。一人ひとりのユーザーをクリエイターと仮定して、自己実現できる環境とはどういうものか。あるいは、運営側が企画するイベントやコンテンツ企画に、“自分ゴト”で参加いただくにはどうすればいいのか。常日頃考えながら、実際のオペレーションに落とし込んでいます。コンテンツづくりというより、オーディエンスづくりというほうが正しいかもしれません。

森内 ニコ動さんは、六本木でニコファーレを運営されていますよね。壁面や天井がLED ディスプレイになっていて、多面的に映像が作れるのは羨ましい。空間とコンテンツを内包した情報プラットフォームを持っているのは大きな強みで、将来的な可能性をとても感じます。

杉本 情報の集まる場所をつくりたいと思っているんです。集約された素材や環境を使い、やりたい人がどんどん面白いことをしてほしい。ニコ動やYouTubeに投稿作品が増えはじめた頃、「プロのクリエイターがやる気を失っている」とよく聞きました。アマチュアである一般ユーザーが投稿する映像と、同じ土俵で比べられるのが面白くないらしい。でも、それはおかしな話で、アマチュアがどれほど育っても、それを凌駕するクオリティを観せてくれるのがプロだと思うんです。

齊藤 よくわかります。

杉本 森内さんのプロジェクションマッピング、齊藤さんのホログラフィックのように第一人者が圧倒的な映像を見せてくれるから、それに影響を受けて一般ユーザーが真似して作ります。はじめはクオリティが低くとも、次第にブラッシュアップされ、バリエーションも増える。映像に接する生活者の意識が変化するなかで、プロはさらにその先へ進んでいく。そういう切磋琢磨の連鎖がクリエイティブを面白くさせてくれます ...

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