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ミラノサローネで存在感を発揮していた日本企業

川島蓉子

インテリア家具の国際見本市である「ミラノサローネ」が、4月8日から13日まで開催された。日本から出展した企業は限られていたものの、デザインを通して企業の世界観を、ひいては日本の存在感を発信していた。

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01, 02 シチズンの展示「LIGHT is TIME」。約10メートル×40メートルの大空間の中に、約8万個もの「地板」と呼ばれる基盤装置がきらめく。

「光と時の関わり」をテーマにしたシチズン

期間中、世界中のバイヤーやジャーナリストがミラノに集結することから、ホテルは通常の数倍に高騰し、レストランの予約を取るのも難しい。まさに、街を挙げた“お祭り騒ぎ”になるのが「ミラノサローネ(以下 サローネ)」の恒例。メイン会場であるフィエラをはじめ、街中のいたるところで展示が行われる。インテリア家具の見本市と謳ってはいるが、製品そのもののビジネスを目的としているところ、デザインを通して企業やブランドのアイデンティティを発信するところと目的はさまざま。それらが混在しているさまが、また面白い。巡って取材を重ねていくと、企業やデザイナーがデザインをどうとらえているかが肌身を通して伝わってくる。

まず今年、大きな注目を集めたのは、初出展したシチズンだ。「トリエンナーレ美術館」の一画を使った展示は、行列ができるほど人気を集めた。会場全体のデザインを手がけたのは、パリを拠点に活動している建築家の田根剛(DGT)さん。エストニア国立博物館や、日本の新国立競技場のデザインコンペティションの最終候補に残るなど、若手ながら実力を持った建築家だ。

テーマは「LIGHT is TIME」。宇宙の始まりであるビッグバンによって光は生まれ、月の満ち欠けや影の変化といった光の移り変わりによって、人類は時の存在に気づかされた。「時間は光であり、光は時間であるという原点に立ち戻った」と田根さん。「光と時の関わり」に焦点を当て、シチズンの時計づくりから発現を得て、未来を切り拓いていくアイデンティティを表現したという。

入り口を抜けると、約10メートル×40メートルの大空間に、天井からの照明を受けて、細かな物体がきらめいている。光を受けて輝いているパーツは、精緻な凹凸や穴が開いている金色の小さな円盤だ。これは、地板(ぢいた)と呼ばれる時計の基盤装置。多数の部品がこれに取りつけられて、腕時計は完成する。一本のワイヤーに、12個、18個、24個と個数で3種類、留める間隔の開き方で12種類、合計36種類のパターンで留め、それを約4200本作って5.4メートル高の天井から下げた。総数で約8万個もの地板を空間全体に散りばめるという、膨大な作業を経て宇宙的な空間を作った。

ワイヤーの群れは、大きな3つの円環状になっていて、その中にも展示がある。シチズンの原点となる懐中時計をはじめ、極小のネジや歯車など腕時計を構成するさまざまなパーツ類、腕時計の製造工程の映像、いくつかの時計の「原点」と「今」が展示されている。圧倒的な技術の進化と、それをシチズンが推し進めてきたことが、多くの説明を受けなくても理解できる。先進的な技術開発と精緻なモノ作りが「シチズンらしさ」であり、それが未来に続いていくメッセージを、明快に表現していた。

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