メディアや取引先、さらには顧客にブランドの世界観を印象づけ、手元に置いてもらうことでブランドとの日常的な接触を可能にする。たかがPRツール、されどPRツール。そのクリエイティブに、ブランドならではのこだわりと工夫を込めた事例を紹介する。
東京への思い伝える日本初の旗艦店DM
フレグランスキャンドル、オードトワレ、コロンやボディケアなどの製品で知られる、パリ発のフレグランスブランド「ディプティック」が昨年12月、青山に日本初の旗艦店をオープンした。このDMはその際メディアやインフルエンサーに送られたもの、ランタンのセットはプレスプレビューなどに訪れた人に渡されたものだ。ランタンは、オープン記念の限定品として、一般向けにも販売された。
こうしたツールのクリエイティブのコントロールはすべて本国で行われる。同社は制作物のローカライズをテーマにしており、このDMも、日本「のし」をイメージした外観になっている。中のブックを開くと、美しい半透明のペーパーに繊細なビジュアルで店舗の詳細が紹介され、プリント写真を模した店舗内外のイメージが挟みこまれている。同社のDMは、届くのを毎回楽しみにしているファンがいるほどだ。
ランタンのデザインは、フランス出身のファッションデザイナー ジョゼ・レヴィの手によるもの。夫婦茶碗に着想を得、日本の伝統的なスピリットを表現したという。東京への思いをアピールするべく、あえて東京のロゴはパリよりも大きくしている。フレグランスキャンドルも「東京」と「パリ」の2種類があり、東京は桜や梅の香り、パリはウッディな白い花の香りを楽しめる。
日本でのプロモーションを担当するヒラオインク 代表取締役社長の平尾賀世子さんは「服は着ないとわからないし、物は使わないとわからない。ディプティックは香りはもちろん、時間が経っても同じ香りを忠実に再現できたり、溶ける速度が計算されているなど、使えばファンになっていただける製品です。実物をお渡しするなどして、なるべく実際に体験してもらうことを心がけています」と話す。