話題性抜群！離島全体が舞台のリアル脱出ゲーム

「島を丸ごと使って脱出ゲームをしよう」。そんな型破りな企画が、宮古島で行われた。背景にあった課題は、沖縄への冬の観光誘致。企画の面白さと計画的なメディアへのアプローチで、約3000人を冬の宮古島に呼び込んだ。

01　参加者に配られた宮古島のマップ。チェックポイントが島内各所に配置されている。

季節外れのビーチリゾートに人を呼び込め

「島を不可解な現象が襲っています！飛行機は飛ばず、船も外に出ることはできません！我々はこの島に閉じ込められてしまいました！！！」。これは、宮古島で実施されたイベント「封印された島からの脱出 supported by 沖縄国際映画祭」のプロローグ。同イベントは電通とよしもとラフ＆ピース、SCRAPが共同で企画し、宮古島市および宮古島観光協会の全面協力により実現した、島全体を舞台とした初の"広域"「リアル脱出ゲーム」だ。沖縄県が募集する「元気プロジェクト」（沖縄に観光客を誘致する事業計画を広く募集する）の採択事業の一つとして、今年1月18日より10日間にわたり、全10回実施された。

沖縄県の抱えていた課題は、冬季の観光誘致。海水浴シーズンの夏季と比べ、例年冬季は大きく観光客数が落ち込む。観光が主要産業の一つである島の経済にとって、観光客数の減少は重大な問題だ。「冬の沖縄に人を呼び込む観光施策を企画する上で、クリアすべき課題は3つあると考えました」と電通 第4CRプランニング局の鈴木瑛さんは話す。「まず、初年度から結果を出せる施策であること。2つめに、話題性がありプロモーションに予算をかけずに成立する企画であること。3つめに、施策を通じて島の魅力を発見でき、その後も継続して人が来てくれるようになることです」。そして、この3つの要件を満たす企画として考え出されたのが、「離島を舞台にしたリアル脱出ゲーム」だった。ゲーム参加者という形で確実に人を呼び込むことができ、人気のコンテンツをこれまでにない規模で開催すれば話題になりやすい。ゲームを通じて島を回ってもらうことで、島の魅力をより深く知ってもらうことも可能だ。舞台となる離島は、沖縄県との協議の結果、地元の協力体制や本土からの直行便があるという利便性を考慮し、宮古島となった。

ゲームの参加者らは、手渡されたヒントを頼りに、島中のチェックポイントに仕掛けられた暗号を解いたり、アイテムを組み合わせたりして、島にかけられた呪文を見つけだし謎を解いていく。チェックポイントになっているのは、島内の遺跡やホテル、展望台、文化施設など、島の歴史や文化が感じられる場所。あまり知られていないが、元々宮古島は、日本・中国・東南アジアの文化が融合した独自の文化を持つ場所だ。ゲームを通じてこうした文化に関心を持ってもらい、ビーチリゾート以外の側面を知ってもらおうと考えた。チェックポイントの選定に当たっては、観光協会や観光課の担当者に島内を案内してもらい、スポットの当たっていない埋もれた観光資源や、リアル脱出ゲームのファンが好みそうな秘密めいた雰囲気の場所を選んでいった。

02　ゲームのパンフレット。チェックポイントを回りながら、島にかけられた呪文を明らかにしていく。

参加したい気持ちをつくる3段階のPR

課題は、いかにこのイベントを告知し、参加したいと思ってもらうか。広告の予算はない。PRでどれだけ話題をつくっていけるかが勝負どころだった。PRは主に3段階に分けて計画された。第1弾は、「ガジェット通信」や「ロケットニュース」といったミドルメディア（マスメディアとパーソナルメディアの中間メディア）へのアプローチだ。「情報感度の高い読者を有するミドルメディアには、話題の火つけ役を期待し、プレスリリースで興味を持ってもらえるように、タイトルなども工夫しました」と鈴木さん。リリースでは「『島全体』を舞台とした初の"広域"リアル脱出ゲーム　地元の全面協力によって実現」と、この企画の売りを端的にわかりやすく表現した。

Tweet