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ファンも納得のクオリティ――JRA×『進撃の巨人』のコラボ企画

JRA×進撃の巨人

競馬への関心が低い若年層にも、競馬への参加を促したい――その目的を達成するために、JRA がコラボレーションしたのは、人気漫画『進撃の巨人』だった。目の肥えたファンが多い同作をいかに活用して、話題化・来場促進につなげたのか。

01 特設サイトトップ。『進撃の巨人』のアニメーション制作を手がけるウィットスタジオによる書き下ろしのイラストを使った。

リアルタイムに企画を修正

競馬界が1年で最も活気づく「有馬記念」。ファンによる人気投票で選ばれた上位人気馬を中心に行われる、いわば"オールスターゲーム"だ。この一大イベントを話題化し、競馬への参加を促したい。また、従来型のコミュニケーションではリーチできない若年層にアプローチしたい。日本中央競馬会(JRA)が掲げたこれらの目標を達成するため、2013年12月に展開されたキャンペーンが「進撃の有馬記念」、若年層を中心に人気が高まる『進撃の巨人』とのコラボレーション企画だった。企画の核は、特設サイトにて期間限定で公開された競馬体験ゲーム。ユーザーは、同作に登場するキャラクター7人の中から1人を選んで操作することで、レースを疑似体験することができた。

「ネット上で話題になりやすい」という特徴も、同作とのコラボを決めた理由の一つ。「ニコニコ動画で『進撃』というタグが付いた動画は1万5000件、Pixivでも関連する投稿が13万件あり、ユーザーによる再編集・二次創作が行われやすいコンテンツと言えます。ファンと同じ目線で二次創作したコンテンツをつくることで、ネット上で受け入れられやすいのではと考えました」と、企画制作チームを率いた電通の森田章夫さんと、エイド・ディーシーシーの関賢一さんは話す。チームメンバーの多くが、元々"進撃ファン"だった。ゲーム内で使用するセリフや映像を洗い出すため、メンバー全員が改めて原作を読み込み、アニメを隅から隅まで見直したという。「作品の世界観を大切にするのはもちろん、競馬の映像としても不自然にならないよう、バランスをとるのに苦労しました」と関さん。選んだキャラクターの設定や性格に合わせて、シナリオ・映像は異なるものを用意する徹底ぶりだった。

コンテンツの制作・修正は、ネット上の反応を見ながら、リアルタイムに行っていった。例えば、有馬記念の「ファン投票」に着想を得て企画したキャラクター人気投票では、思わぬ番狂わせが起こった。「ランキング結果にはおおよその予測を立てていたが、ユーザー同士が結託し、投票総数80億票のうち67億票が端役のハンネスに集中する事態に。とは言え、企画側としては主人公を登場させないわけにもいかない。そこで、ハンネスが『出場辞退』するというストーリーをつくり、その心境をハンネス自らが語るムービーを制作しました」と森田さん。ユーザーからは、投票結果を受け入れた上でこうした対応をとったJRAの度量の大きさを評価する声が多く寄せられたという。

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