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デザインの見方

「本」という構造に寄りかかったデザイン――『CHAIRMAN ROLF FEHLBAUM』

色部義昭(日本デザインセンター色部デザイン研究室)

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01,02 『CHAIRMAN ROLF FEHLBAUM』
○AD/Tibor Kalman

『Chairman Rolf Fehlbaum』は、椅子メーカー ヴィトラ社のオーナーであるロルフ・フェールバウムの業績を称えたビジュアルブックです。ベネトンの『COLORS』のアートディレクションや、傘の内側に青空を描いた「スカイアンブレラ」のデザインなどで有名なティボール・カルマンがアートディレクションを手がけている本で、記録写真や映画のワンシーンのカットなど出典もバラバラの、方々から集めてきた写真と画が、1ページ1枚というシンプルなルールで構成されています。

ページをめくると、まず「In the beginning」という言葉で始まり、荒野の写真がある。次にサルが人間に進化する図や、立って歩く人の写真などが続き、椅子に座っている人の写真が登場し、ロルフ本人の写真や、さまざまな椅子の写真なども登場します。ティボール自身がディレクションして演出された画像はほとんど使わず、人類が積み重ねてきた歴史を物語るような記録写真や、誰が撮影したかわからないようなスナップショットなどメジャーな出来事からマイナーな出来事まで、かき集めた膨大な写真を一緒くたに織り交ぜながら、椅子と人間にまつわるストーリーがヴィトラ社の歩みと交差しつつ描かれていきます。

この本のデザインを読み解く中で、特に僕が感銘を受けたのは「本」というモノの構造に思い切り寄りかかるようなクリエイションの仕方です。版型はB6サイズより小さい小ぶりなものですが、ホローバックでとても開きの良い製本。読者は写真1枚1枚をじっくりと見るというよりは、手に持ってパラパラとめくり、スライド映写のアニメーションのようにスピーディーな展開を楽しめというつくり方がなされています。

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