海外で道をひらく日本人クリエイターのいまをレポート。今月は、2013年開設の「自由貿易区」はじめ、さらなる発展を見込む上海から。インタラクティブクリエイティブ ディレクター石坂昌也さんを紹介する。
01 Missing Children
中国の失踪児を見つける顔認証アプリ。
多様な文化背景の人々と関係を築く
アジア市場の成熟を機としたワン・トゥー・テン・デザイン上海支社設立は、石坂昌也さんにとってまさに渡りに船だった。グラフィックデザインを学んでいた頃から、「いつか海外で」という思いがあったからだ。中国に渡る前から、国内外でニーズが高まりそうな分野と、自分のやりたいことの重なる部分を中心に、経験を積んでいった。カンヌライオンズ2013モバイル部門ゴールドを獲得した、顔認証アプリで児童誘拐問題の解決を図る「Missing Children」はその結実のひとつ。
いまも昔も、上海はまさに人種のるつぼ。日本との違いを石坂さんはこう語る。「一番の違いはコミュニケーションの深度です。多様な国の人がいるので、話す内容の背景が異なるし、それだけ多くの知識が必要です。なるべく相手のポジティブな部分を探し、関係性を築くのが大事ですね」。
共通言語は英語だが、同じ単語でも国ごとにイメージがかなり違う。「仕事では齟齬がないよう特に注意しています。覚えた単語はまずネイティブに話してニュアンスを確かめ、母国語が英語でない人もいるので、なるべく多くの国の人と英語で話して、リスニングを強化するように努めています」。
日本とアジアの間には、一筋縄では解決できない問題もある一方、市場の重要性は今後も増していく。石坂さんは一つひとつの仕事を糧としながら、アジアでの活躍の幅を広げようとしている。