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「泣ける別れ」の一点訴求「ファイナルファンタジーX/X-2 HDリマスター」

ソニー・コンピュータエンタテインメント ジャパンアジア

10年以上前の名作RPGが大ヒットしている。前世代ゲーム機からの移植としては異例の販売数44万本(13年12月26日~14年1月15日時点)。訴求点を絞った表現とメディア戦略がこのヒットを生んだ。



01 「史上最もせつないフォトイベント」マルイシティ渋谷1F店頭プラザで開催。200組ほどが参加した。

02 テレビCM「この世界の別れ」篇(60秒)。TYOの佐藤渉さんが演出。ヒューマンタッチな映像表現に挑戦した。

03 ポスターはフォトイベント(01)で撮影後、その場で入稿。

過去の資産を最大化するプロモーション

2013年12月26日発売の、プレイステーション3とPS Vita向けRPG「ファイナルファンタジーX/X-2(FFX/X-2) HDリマスター」が初週で33万5000本、1月15日までに約44万本を販売した(メディアクリエイト調べ)。「FFX」は01年、「FFX-2」は03年発売で、合計全世界1400万本を出荷した大ヒット作。「HDリマスター」は、インターナショナル版の音声を日本語にし、グラフィックの質を高めたものだ。

「これまでリマスター版は、大タイトルでも10万本未満」(電通のストラテジックプランナー加我俊介さん)という中で、表現、メディア共に、選択と集中が奏功した。

クリエイティブディレクターの島津裕介さん(dreamdesign)は、ゲームの提供価値を「せつなさ」と規定。企画当初から表現の核を「別れ」に見定め、「私たちはいつか必ず、一番大切な人と、別れる運命にある」とのコピーを用意した。CM15秒篇では「初の恋人との別れ」「引越しで友人との別れ」などエピソード5つ、60秒篇ではさらに2つを追加。「どれか自分の別れの体験とリンクすれば」と種々の状況を用意した。ゲームの説明は「FF史上最もせつないストーリー」とのコピーと発売日のみ。

「FFX」は主人公とヒロインがハッピーエンドを迎えない、従来のRPGのお約束を破った点も話題となったゲームだ。「別れ」を広告でうたうことに、いわゆる「ネタバレ」の恐れはなかったのか。加我さんは「人は感情を揺さぶるものにお金を出すという視点に立ちました」と話す。「話題の震源地になるのはプレイ経験者。ストーリーは既にバレているのでせつない気持ちを掘り起こすことに注力しました」。

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