シンプルなメッセージを、自分なりに少し考えたくなるような表現でくるむグラフィックデザイナー、長嶋りかこさん。グラフィックやブランディング、自主アート活動などさまざまな分野で活躍する長嶋さんの、アイデアを育てる方法とは。
「ブランド」を囲む村
「そのブランドはなぜ存在しているの?という問いに答えることが、アイデアを考える上で一番大切だと思うんです」と、博報堂のグラフィックデザイナー 長嶋りかこさんは話す。「その答えが単純な利益追求に隠れてしまって見つかっていない、というケースは珍しくなくて。ブランドが大きいほど、商品を売るため、事業を広げるため、お店を広げるため...と答えがブレてしまう。そのブランドが生みだすものは、なぜ世の中に必要なのかという話から始めることをいつも意識しています」。
その答えを見定め、ブランドの目指す世界を具体的にイメージするために行っているのが言葉の「地図」を描くこと。作ろうとしているモノができた後、その周辺はどう変わる?街の姿は?集まる人は?その人たちは何を思う?――そうして起こる変化こそ、そのブランドが存在する理由だ。紙の真ん中に「そのブランドがこれから起こすモノ/コト」を置き、思いつくまま、まずは言葉を書き込んでいく。いったん出はじめれば、そこからどんどん派生していく。「ロゴやネーミングや商品開発など、ブランディングに携わるときは、ほぼ必ず書きます。特にアパレルブランドはニュアンスにとどまっていることが多いので」。