IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

           

2014年注目のクリエイティブチーム

サイバーエージェント『デジタルの力でユーザーを「動かす」』

サイバーエージェント

既存の広告手法やサービスに、デジタルテクノロジーの力を加えることで、新たな体験を生み出す。サイバーエージェントにおいて次々と先進的な広告を展開するクリエイティブ・テクノロジー局は、"メッセージを届ける"だけでなく、"体験を届ける"ためのクリエイティブを生み出している。

01 Bx-Design Team(ビー・エックス・デザイン・チーム)
着席者 左からクリエイティブ・テクノロジー局 局長 二宮功太さん、木川真里さん、望月宜太郎さん、酒井英典さん、中橋敦さん、押田真夢さん。起立者 左から北原成憲さん、有賀翔平さん、吉田雅一さん、金子彰洋さん、福田新さん。

02 Bx-Creative Team(ビー・エックス・クリエイティブ・チーム)
左から時計回りに、長田亜美さん、松宮優紀子さん、高橋真弓さん、箸尾拓哉さん、日高勇太さん、滝沢圭太郎さん、末永剛さん、友保好一さん。

ユーザー体験をデザインする

「デジタルの力でユーザーにとって最高のブランド体験を生み出す」。そんなビジョンを掲げるのは、デジタルを基軸にメディアを横断したさまざまな広告施策を生み出すサイバーエージェント クリエイティブ・テクノロジー局だ。特定領域に特化したさまざまな専門部隊が存在する同社インターネット広告事業本部において、クリエイティブ・テクノロジー局はデジタルの力を用いた先進的な広告を手がけている。

「このビジョンを達成するためには、ヒト、モノ、コトをしっかりと動かす、新しい広告のカタチをつくり出していくことが重要」と、同局の局長を務める二宮功太さんは話す。テレビCMや雑誌広告、新聞広告といった既存メディアでは、どんなメッセージが心に響くかというアテンションが重視されているが、同局はそれに加え、デジタルを活用することで、どんな体験がユーザーの行動に繋がるかという「コネクションの獲得」を強く意識している。

人を動かすためには、「コミュニケーションデザインという考え方だけでは、デジタルが生活に根づいたユーザーにアプローチしづらい」と二宮さんは指摘する。「『メディア上にてコンタクトポイントを工夫し、ラブレターを渡すための最良の環境を設計する』というコミュニケーションデザインの考え方に加え、僕らが大切にしたいのは、『ユーザー視点で、ブランドを体験しやすい環境を設計する』というユーザー体験デザインです。メッセージを届けるだけでなく、ユーザーにブランド体験を提供するクリエイティブが必要だと考えています」。

2012年冬に手がけたサントリー ペプシスペシャルのプロモーションにおいては、NFC(近距離無線通信)技術を用いた「スマートOOH広告」を展開。掲出された交通広告などにユーザーがスマホでタッチすると、自動的にスロットゲームが開始し、その場でプレゼントが当たるというもの。

また13年に展開した住宅・不動産情報サイトSUUMOのWebキャンペーン「スーモを探そう in 47 都道府県」は、スーモの目撃情報を集め、日本全国47都道府県からスーモを探し出すWebゲーム。GoogleStreet Viewを活用することで、実際の街を探し回るような臨場感を生み出した。

2つのキャンペーンに共通しているのは、既存のメディアやサービスに新たにデジタルの力を加えることで、新しいユーザー体験を生み出していること。「ブランドを体験しやすい環境の設計」を実現し、多くのユーザーを動かすことに成功している。

03 KDDI「au 紙兎ロペ」
TOHOシネマズの劇場作品の間に公開されたアニメ「紙兎ロペ」とau のコラボレーションアニメを制作。「めざましテレビ」でも放映。

04 サントリー ペプシスペシャル「スマートOOH」
NFC(近距離無線通信)タグを交通広告などに設置し、スマホでタッチするだけで自動的にキャンペーンへ誘導する仕組み。

05 エイベックス「ICONIQ UNKNOWN」
写真展「ICONIQ UNKNOWN」にて、気に入った写真にツールでタッチすると、自動的に写真をFacebook、Twitter でシェアできる「リアルいいね!」の仕組みを導入。

06 リクルート住まいカンパニー「スーモを探そうin47 都道府県」
日本全国47都道府県からスーモを探し出す、Google Street View を活用したWebコンテンツ。

デジタルセントリックな発想

クリエイティブ・テクノロジー局に所属するスタッフは現在22人。プランニングを手がけるBx-Design Teamと、クリエイティブを手がけるBx-Creative Teamという2つのチームから構成される。各チーム名の頭につくBxとはBrand Experienceの略であり、ユーザーのブランド体験を重視する局の考えが取りこまれている。

プロジェクトは数名のスモールチームを結成して動き、基本的にプランナーがプロジェクトの意思決定者となって、すべての権限を持つ。プロジェクトの途中過程で上長に判断を仰ぐこともなければ、助言以外は横から口を出すこともないという。「僕が必ず正解を持っているわけではありませんし、コンセンサスをとるために時間を浪費することももったいない。アイデアの質の良し悪しだけでなく、マーケットに対してどれだけスピーディに出すことができるか、そこで機会を逃さずに動けるかということは、とても大きな価値になります」。

チームのスタッフが「デジタルセントリックな発想ができる」ことも、大きな特長として二宮さんはとらえている。現在クリエイティブ・テクノロジー局に所属するメンバーには、既存メディアの広告に携わった経験を持つ人が少ない。「これまでの広告手法による従来のやり方が刷り込まれていないから、そこに縛られないし、むしろ強みになる時代。だからこそ、フォーマットが存在しないデジタルの世界において、自由に発想できるのだと思います」。

それに加えて、同社はエージェンシーという立場でありながらも「Ameba(アメーバ)」を運営するメディア企業でもある。そんな同社ならではのプロジェクトが、13年5月から展開している日本中央競馬会(JRA)のユーザー参加型のWebコンテンツ「みんなでチョイス!」だ。日々出題される二択クイズに対して、ユーザーは自分が持っている仮想ポイント「チョイG」を正解だと思う答えにベットし、ポイントを増やしていくというものだ。担当したプランナーの福田新さんは、毎日更新されるコンテンツを運用するため、Ameba事業部内にJRAチームを結成。プランナーと運用部隊が密に関わることで、出題されるクイズにはその日話題のネタを盛り込み、リアルタイムでユーザーの声に応えることを可能にした。結果として20万人を超えるユーザーが会員となり、多くの競馬未経験者を取りこむことに成功した。

07 日本中央競馬会「みんなでチョイス!」
毎日出題される2択の予想問題に、コンテンツ独自の仮想通貨「チョイG」を賭けて解答する未来予想エンターテインメント。

08 ダイナースクラブ 「Diners Club Social Jazz Session 2013-14」
ジャズ演奏の動画を募集し、ユーザーの投票を実施。選出された演奏者は、ブルーノート東京にて行われるライブにて、ジャズ界の巨匠リー・リトナーと共演できる。

09 サイゲームス「三国志パズル大戦×デカスマホ」
大型タッチパネル式デジタルサイネージ上で、スマホのアプリを利用できるサービス。

ユーザー体験をチューニングする

10~14 西武鉄道「あの花Smile Check-in」
秩父を舞台設定とした人気アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」に登場したスポットを、スマホを持ってめぐるO2O キャンペーン。
Ⓒ ANOHANA PROJECT

デジタルならではの力を活用した例として、13年8・9月に実施された西武鉄道のスタンプラリーキャンペーン「あの花Smile Check-in」がある。人気アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の舞台設定とされた埼玉県・秩父エリアを、スマホを利用しながら巡るもの。アニメのシーンに登場した場所がチェックインポイントに含まれ、各地にQRコードが記載されたポスターが設置されている。スマホでQRコードを読み込むと、描き下ろしイラストを使用したオリジナルの壁紙を入手できるほか、駅前には「あの花ギャラリー」がつくられ、訪れたファンが自由に感想を書くことのできるメッセージボードや、声優たちのサイン色紙が展示された。

同キャンペーンを担当したプランナーの押田真夢さんは「西武鉄道は、若い人が行動を起こす魅力的な体験を提供することに課題を抱えていました。そこで、西武線で訪れることのできる秩父に強力なコンテンツを絡め、独自のブランド体験をつくり出すことを狙いました」と話す。

キャンペーン以前からファンがアニメの舞台を訪れる、いわゆる「聖地巡礼」は盛んに行われていたが、押田さんが注目したのは「そこがアニメの中で出てきた風景ということはわかっても、どんなシーンで出てきた場所なのか、調べるコンテンツがないと思い出せないことが多い」というファンの声。そこで、スマホでチェックインすると、その場所について説明するなど、デジタルならではの機能を盛り込んだ。

またキャンペーン期間中、Twitterのキャンペーン公式アカウントに対する反響の大きさから、リツイートしてくれた人の中から抽選でポスターをプレゼントするTwitterキャンペーンを企画するなど、話題の拡散も狙った。結果として、2週間というキャンペーンの期間中に、約1万5千人のファンが秩父を訪れた。

既存の広告と異なり、「ユーザー体験をチューニングできることが、デジタルを軸にしたキャンペーンならではのストロングポイント」だと二宮さんは話す。「みんなでチョイス!」では日々出される二択クイズに時事ネタを盛り込むことで話題化を図り、「あの花 Smile Check-in」はTwitterの反響を新たな企画に反映させた。「既存メディアによる広告は、完パケ納品して終わりというのが一般的でした。それがデジタルではユーザーの反応を見ながら運用していけます」。ユーザーに寄り添いながら体験を形づくっていくことができる、それがデジタルの力のひとつだ。

無料で読める『本日の記事』をメールでお届けいたします。
必要なメルマガをチェックするだけの簡単登録です。

お得なセットプランへの申込みはこちら

2014年注目のクリエイティブチーム の記事一覧

ディレクターとデザイナーを有するプロデューサー集団
コンサルからアウトプットまで分析を基に築きあげる
異なる個性の3人が生み出す多彩なデザイン
サイトに込めた「驚き」こそが独自性になる
ユーザーのより良い体験を追求する
サイバーエージェント『デジタルの力でユーザーを「動かす」』(この記事です)

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
ブレーンTopへ戻る