海外で道をひらく日本人クリエイターのいまをレポート。2014年サッカーW杯開催を控え、熱気が最高潮に向かっているブラジルで、映像ディレクター、アートディレクターとして活躍する、緒方信行さんを紹介する。
間近で見た、伝説の写真家の姿
緒方信行さんはブラジルで、デザイナー、映像ディレクターとして活躍、2007年のパンアメリカン競技大会のブラジル代表ユニフォームや08年北京五輪でブラジルの公式ユニフォームのデザインを担当した。リオ、サンパウロ中心のファッションのうねりは地方へも広がってきた。緒方さんはいま新しい市場を開拓しようとしている。
転機は1996年、ベネトンのコミュニケーション・リサーチ・センター「FABRICA」への入学。1980~90年代に物議をかもした写真家オリビエロ・トスカーニに師事、ファッションや映像の基本となるクリエイティブの考え方を学んだ。
「オリビエロからは『本当にクリエイティブなモノは、決して居心地良いものではない』と学んだ」と振り返る。常識外のものは人を不安にさせ、理解にはエネルギーがいる。「それでも彼は、力強く世界へクリエイティブの大切さを説き、プロジェクトを売り込み、表現の力で新たな考え方を提示した。間近で見たその姿は財産です」。
イタリアで繰り返す失敗に落ち込むこともあった。そのとき、ブラジル人の友人の言葉はいまも覚えている。「『最後には何とかなるさ。いま、何とかなっていないなら、まだ最後じゃないんだよ。ハハハ』って」。FABRICA以来、海外で生活を続ける。「海外で、自分が何を得るかでなく、自分は何を提供できるか?という視点があれば、飛び出してみるのが得策だと思います」。