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特集 話題を生む! オンライン動画

ブランドを高めるバズムービー

宮野淳子(日本ロレアル)

動画を積極的に活用する企業は、マーケティングコミュニケーションにおけるオンライン動画の位置づけをどうとらえ、何を期待しているのだろうか。2013年4月に公開したUVケア商品の動画をヒットさせた、日本ロレアルの宮野淳子さんに聞く。


01 日焼けアートによる動画「GoBeyond Protection-最高のUVブロックだけじゃない」。ロレアルならではの高級感や美しさにこだわったバイラルムービー。ボディペインティングは、イラストレーターのKITAJIKOさんが手がけた。

「日焼けアート」動画が120万回再生

この4月に、バイラルムービーを初めて本格的に展開しました。商品はUVとエイジングケアを組み合わせた日焼け止め乳液「ロレアル パリ リバイタリフト UVブロック」です。商品を絵の具のように使ってモデルの肌に模様を描き、日焼けマシーンで焼くことで、まるでヘナタトゥーのようなボディアートが出現します。

この動画を制作した背景には、この春から日本に導入された「PA++++」という強力な紫外線カット機能と、「メギゾリル」という紫外線吸収剤を配合していることを消費者にどう伝えるか、というマーケティング上の課題がありました。特にメギゾリルはロレアル独自の成分なので会社としては推したいと考えているわけですが、化粧品のテクノロジーは多くの女性にとって専門的で難しいもの。当社は美容部員を持たないため、店頭とWebのみでこうした情報を伝えなければならないのですが、Webにメギゾリルについての説明を載せていくら集客しても、専門的ゆえに読まれず、離脱率が高いという問題を抱えていたんです。

一般の方々に商品機能を伝えるには、まずエモーショナルなアプローチをしないといけない。そのために動画にチャレンジしようと考えました。テレビCMとは違い、純粋に商品への興味を喚起することが目的だったので、話題になる「バイラルムービー」づくりを目標に据えました。

02 モデルが日焼けマシーンに入るチャンスは1回。それまでは、スタッフが自身の身体に商品をペイントして何度も仕上がりを試した。

話題性とブランディングを両立させる

ただし、バイラルムービーと言っても、面白ければ何でもいいわけではありません。提案された案の中には、カウントダウンをして時間切れになると商品が爆発する...といった案もありました。ですが、ただ面白いだけでバイラルしたとしても、それでブランドには何が残るのか?見た人にどんな感情を残すのかを考えなければいけないんです。ロレアル パリは日本市場で「マスプレミアム」というポジションを狙っていますから、「高級感」「プロフェッショナル性」「美しさ」といった要素は欠かせませんでした。

この「日焼けアート」の案は、社内にあった競合他社との比較実験データから生まれたアイデアです。メギゾリルは紫外線吸収効果が高く、同じように肌に塗って日焼けをしても、当社の製品だけが、このように塗った部分だけ白く残るという結果が出ていました。これをアートとして展開できるのではないか、それならば美しく、かつ他社製品にはできないロレアル独自のものになる――こうして企画の採用が決まりました。

同時期にテレビCMも展開しましたが、こちらはタレントを起用し、商品機能を前面に訴えたもの。動画で製品を推してしまうと広告だと思われて見られませんから、両者はまったく別の企画になっていて、互いに補い合う関係性と位置づけています。

商品ページの滞在時間が伸びた

制作した動画は、YouTube内で広告を出稿しビュー数を伸ばしています。日焼け止め商品はYouTubeで自然と検索されるようなワードを含んでいるわけではないので、プッシュ型で視聴者に動画に触れてもらい、「何だろう?」と思ってもらうことで拡散、シェアされるようにしました。

今回初のオンライン動画の試みだったので、その結果もシビアに問われるわけですが、単純なサイトへの誘導率で比べると、他のオンライン上の施策に比べて動画は実は数値が低いんですね。ですから、120万回再生という数字を出しても、そのままでは「動画は効率が悪いから、次はやらない」という結論になってしまいます。そこで関連のさまざまなデータを検証し直した結果、態度変容の数値が動いていることがわかりました。動画を見てからサイトにアクセスしてくれた人は、そうでない人に比べてWebでの滞在時間が約2倍になっていた。動画で関心を持ったことで、サイト上の専門的な説明も読んでくれるようになったんです。この結果によって、動画の成果を証明することができました。

デジタル予算は自ら勝ち取る

広告主の中でも、デジタル施策の担当者は予算を得るのに日々必死です。よく、「上司がWebに理解がないので予算が取れない」と嘆いているデジタルの担当者がいますが、上司が知らないのは当たり前。「動画は感情を動かせます」といくら言っても、予算が出るはずはありません。今回はテレビ用の予算を一部動画に移譲するために、YouTubeチャンネルに登録しているユーザーの年齢層がターゲットとほぼ同じであること、競合がどのような動画の施策を打っているかなど、あらゆるデータを集めて、交渉しました。予算を使うからには失敗できないし、たとえ失敗しても、すべての手はつくしたと、納得感のある失敗でなければなりません。

それから、動画が完成した後も、GRPが減った分を補うべく、営業会議に出向いてプレゼンし、流通用の商談資料も作りました。とにかく、あらゆる手を使って結果が出るように働きかけました。

2014年は、会社としてももっと動画に力を入れていく予定です。動画は個人の感情に訴えられるだけでなく、日本の女性の価値観、ひいては社会の価値観を変えていくような大きなポテンシャルを持っていると思います。今後は、美容部員の代わりとしての役割をもっと担ってもらいたいですし、今回のような単発の動画だけでなく、もっと動画によるコミュニケーションの積み重ねで、消費者との関係性を構築していくことにチャレンジしたい。日本の中でも、それを当社が先んじて実行していければと思っています。


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宮野淳子さん
日本ロレアル コンシューマープロダクツ事業本部
デジタルマーケティングマネージャー

  • 企画制作/電通レイザーフィッシュ+太陽企画

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