「うちで踊ろう」(2020年、星野源)他
名言ヅラしていなくて、みんなのおもちゃになるようなコピーが好きです。「ダッダーン」は幼稚園でゲラゲラ笑いながら真似していた、原体験とも言えるコピー。当時はダダンというのが商品名だということも知らず、ただ語感が面白くてひたすら繰り返していたのですが、それってコピーの究極の到達点ではないかと思うのです。意味がないけれど魅力的な言葉には今でも強い憧れがあります。
名作コピーの時間
どんなコピーに出会ったかでコピーライターの人生は決まる(のかも)
17年前のその日、僕は失意の中で局長室のソファに腰を沈めていた。目の前にいる眼光鋭い白髪の人物が、最初の上司になる平井英人さんだった。その日は配属式で、僕は希望していたコピーライターにはなれず、セールスプロモーションの部署に配属されたのだった。平井さんは昔有名なコピーライターだったと話に聞いていた。ダンディで女性にモテるらしく、今まで何度か結婚と離婚をしているという噂もあった。その晩、平井さんは僕たち新人を行きつけのクラブに連れていき、コピーライター時代の話をしてくれた。
平井さんの代表作は日産ブルーバードの「愛されてますか。奥さん」だった。僕の生まれる前の作品だ。平井さんは「コピーというのは、私小説なんですよ」と言って悪戯っぽく笑った。