1960年の創業から一貫して、グラフィックを軸とした広告デザインを手がけてきたたき工房が今年、自社アプリを開発。さらにプロダクトブランドを立ち上げた。いずれも社員の声によって始まったプロジェクトであり、自ら発信していく姿勢を後押しする土壌によって育まれたものだ。
01 写真左から川郁子さん(ディレクター)、三浦万裕さん(プロデューサー)、山岡里佳子さん(チーフデザイナー)、伊波元樹さん(デザイナー)、今村浩さん(チーフデザイナー)、吉田早希さん(チーフデザイナー)、東達哉さん(チーフデザイナー)。
社員発のプロジェクト
グラフィックを中心に広告デザインを手がけるたき工房が今年5月、自社のプロダクトブランド「TAKI PRODUCTS」を立ち上げ、続けて8月には自社開発アプリ「Hello Petz」をリリースした。
広告の仕事とは異なるこれら2つの動きだが、いずれも社内スタッフから「こんな仕事をしてみたい」という声があがったことによってスタートしたものだ。
積極的にスタッフの声を聞き入れ、プロジェクトとして進めていくのは、創業以来同社に受け継がれている伝統的な姿勢。古くは90年代後半のゲームソフト開発がそうだ。スタッフからあがった「ゲームソフトの開発をやってみたい」という声を受け、実際に専門チームを立ち上げて開発した。
その後インターネットの普及に伴い、社内には新たにゲームソフト開発のメンバーを中心とした、Web制作を中心に手がける「Media Extension」というチームが立ち上げられた。それによって「マスだけでなく、Webもあわせて提案できる体制が整った」と取締役の富澤真琴さん。また同事業部のディレクター川郁子さんがその特徴を「ゲーム事業が出発点だったこともあって、FLASHゲームなどを用いたWebサイトや、3DCGを用いてキャラクターデザインをするなど、エンターテインメント性の高いものが得意」と話すように、ゲーム開発で培われたノウハウや技術は現在も生かされている。
2011年にはiPhone、iPadアプリの開発も行うようになり、初めて開発したベネッセコーポレーションの「空想どうぶつえん」は、App Store Rewind 2011において、その年のベストiPad Appに選出。そして今年は、13文字以内のメッセージをさまざまなキャラクターが相手へ届けてくれる自社アプリ「Hello Petz」をリリース。また今年から新たに、新技術の勉強やプロトタイプの制作を専門で行う「研究開発チーム」が設立され、ますます自社発信のプロジェクトが活性化している。
紙を用いたプロダクトを開発
そんな社員発の動きを重視するたき工房を象徴しているのが、5月に立ち上げられたプロダクトブランド「TAKI PRODUCTS」だ。そのラインナップには、まるで色紙の束がズレて重なっているように見える変わった形のノート「LAYERED NOTE」、2メートル50センチという長さの紙に物語のイメージが刻まれた絵本「絵巻本」など、たき工房の若手デザイナーたちが手がけた5つのプロダクトが並ぶ。
昨年1月、「もっとデザイナーとして“個”が立つような仕事にチャレンジしたい」という意見が複数寄せられたことを受けスタートしたプロジェクトだ。
目指すのはデザイナー一人ひとりをブランド化していくこと。有志の運営委員会が立ち上げられ、週1回のミーティングを重ねてプロジェクトは進行。たき工房のことを知らない人に知ってもらうきっかけになること、普段関わりのない人たちへ届けることを趣旨として、“ヒトに「伝えたくなる」をつくる”をテーマにオリジナルのプロダクトを開発することが決定した。たき工房はグラフィック広告を主に手がけていることもあり、そこでたまったノウハウや知見を生かすことのできる「紙」を素材に用いることとなった。