広告制作会社であり、現代アートのギャラリーや旅行企画、ワインバーの経営など、同時に多数の事業を行っているステッチ。それらは決して広告と無関係の事業ではなく、生活者と直接に関わることで創造力にリアリティを加えて、人を動かすコミュニケーションの武器として用いている。
01 前列左から三浦恭平さん(ディレクター)、岡村雅宏さん(プロデューサー)。後列左から山根朋子さん(アートディレクター)、黒図大輔さん(アートディレクター)、庭木望さん(プロデューサー)、宮崎由美子さん(プランナー)、名古屋豊さん(アートディレクター)。
創造力にリアリティを加える
現代アートのギャラリーを所有する、アーティストと一緒に地方へと旅する体験型ツアーを運営する、東京・赤坂でワインバーを経営している――これらはすべて、Webを中心とした広告の企画制作を行うステッチが行っている事業だ。
ステッチが設立されたのは1997年。以来16年間にわたってWebや映像にはじまり、最近ではデジタルテクノロジーを用いたプロジェクションマッピングなど、メディアをまたいだ広告コミュニケーションの構築を行ってきた。「コミュニケーションをデザインする際に重要なのは、創造力に加えてリアリティを持たせ、人を“動かす”こと」というのが、ステッチが持つ考えだ。「現代では単なるコミュニケーションだけでは、実際に人を動かすことは難しい。生活者に共感・体験してもらい、実際に行動を引き起こすことが大切」とも考えている。そのために、商品のメッセージを伝えるだけではなく、生活者と商品がどう寄り添っていけるか、どんな関係性を築くことができるのかを、コミュニケーションをデザインする際に重視している。
2006年、あるワインのイベント企画の依頼を機に、ワインのコミュニティサイト「GOOD WINE LIFE」を立ち上げた。同時にリアルな店舗として、東京・赤坂にワインバー「ni-go」をオープン。バーチャルコミュニティとリアル店舗で得られた生活者のインサイトをコミュニケーションに活用し、人を動かすことにつなげ、クライアントより評価を得た。