インサイトをクリエイティブに生かし、もっと届く表現にするための考え方とは?アカウントプランナーからキャリアを出発し、現在はコピーライターとしても活動する磯部光毅さんに聞いた。
成功キャンペーンの背景にインサイトあり
「媒体が広がってメディアニュートラルになったからこそ、いま戻るべきはインサイトです」と磯部光毅さんは話す。消費意欲の停滞、市場の成熟化、コモディティ化、情報過多...コミュニケーションを難しくする要素が増え、複数のメディアを使い分けながら一貫したテーマを伝える、コミュニケーションデザインの考え方が最も注目を集める時代になった。そんな中で、キャンペーンの全施策を束ねる「核」となるのがインサイトだと磯部さんは言う。「なぜなら、インサイトは心を動かすツボだからです。コアインサイトがあり、それに呼応するコアアイデアがある。そのアイデアを各施策に落とし込んで展開するためのシナリオがある。メディアニュートラルの時代の成功キャンペーンの背景には、必ず考え抜かれたインサイトが存在しています」。
そのインサイトはどのように見つけられるのか。リサーチの方法論は進化をつづけている。ターゲットを集めて実施するグループインタビューや、時間をかけて対面で話を聞くデプスインタビューは、言葉をベースにしたリサーチ方法。「ですが、生活者は必ずしも本当のことを言ってくれるとは限らない。正直に答えているつもりでも、本当は人は自分のことをわかっていない、だから言葉では限界があるというのが近年の通説です。そこで、行動から判断するエスノグラフィー調査や、SNS上の日常的会話や行動を分析するソーシャルリスニングなどが最近では使われるようになっています」。
アイデアと往復して再構築する
調査手法が進化を遂げる一方で、インサイトを発見するために有力なもうひとつの方法が「具体案から見つけること」だと磯部さんは言う。「コピーライターのコピー100本ノック、という話がありますが、具体的なコピー案や、デザイナーが描いた一枚の絵からインサイトが見つかる、ということも現場ではよくあることです」。