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la laboratoireーーアートとサイエンスを融合させる実験場

文・川島蓉子

パリに「le laboratoire」というユニークな組織があると聞いて、取材を申し込んだのは半年ほど前のこと。代表者が超多忙ということで、今回ようやくインタビューすることができた。

01 パリ1区にある「le laboratoire」入り口。教育、プロダクト開発、カルチャーの3つの機能を持つ実験的スペースだ。

21世紀のバウハウス

「le laboratoire」(以下 ラボラトワール)が居を構えているのはパリの1区。表通りから一本入った静かな通りに位置している。ギャラリーやショップを併設しており、外から見ると、研究所という雰囲気ではない。ここを率いているのは、ハーバード大学の教授も務めるデイビッド・エドワードさん。カジュアルな装いに、長めのカールした髪、頬から顎を覆うひげ、縁取りの眼鏡という風情で、「ラボラトワール」の活動について饒舌に語ってくれた。

オープンしたのは2007年のこと。「ポストグーグル世代に向けて、アートとサイエンスを融合させ、イノベーションとクリエーションのうねりを起こしていこうと考えた」。学校も企業も、既存の組織はどんどん細分化されていて、イノベーションや自由なクリエーションがしづらい環境に陥っている。一方、インターネットの普及によって、誰にでも開かれたパブリックなスペースとして、個人がイノベーションにつながる取り組みを行える場が増えている。さまざまなところで起きている、こういったアンバランスな状況に対し、現状で不足しているものを補う、あるいは異なる分野をつなぐことで、「21世紀のバウハウスと言っていいくらい力を入れて発動した」のが「ラボラトワール」だという。エドワードさんはここを拠点に、米国、ヨーロッパ、そしてアジアと、世界を飛び回りながら、精力的な活動を広げている。

02 ラボラトールに併設された「wikibar」。ここで、同研究所の開発した商品を体験できる。内装は、食品の分子構造から着想した六角形をモチーフにしたデザイン。

食品分野で進むプロダクト開発

「ラボラトワール」の仕事は大きく3つに分かれる。ひとつは教育で、「若い人たちが白いページに夢を描ける可能性を広げたい」という思いから始めた。ハーバード大で教鞭をとっているのに加え、「ラボラトワール」でも、数多くの教育プログラムやワークショップを行っている。「アートとサイエンス」と掲げているように、理論的な要素と感覚的な要素が融合しているのが特徴だ。

2つめは商業で、数多くの開発プロジェクトを行っている。自主的に行っているものもあれば、企業や大学と協業して進めている。ものもある。――世の中にまだない、未来に向けたプロダクトを「“サイエンス”と“デザイン”と“夢”をミックスさせて作っていく」。理論と感覚を融合させた新しいモノ作りに挑んでいる。

食にまつわる研究は、エドワードさんが特に強い関心を持って進めていて、商品になったものも出てきている。例えば「AEROSHOT ENERGY」というプロダクトは、吸引することで、カロリー抜きで栄養分を摂取できるプロダクト。リップスティックの形状で、口にくわえて吸い込むと、豊かな香りが鼻腔に広がっていく。食した実感はないものの、行為と経験が結びついたユニークな驚きがあり、これで、栄養素だけを身体に届けられるという。チョコレート、青リンゴ、ラズベリーなどの種類が揃っていて、フレーバーのバリエーションも楽しい。デザインもカジュアルな雰囲気ながら洗練されていて、口にくわえたシーンも決して見苦しくはない。宇宙食のようなパッケージに入れられ、併設されている「labshop」で売っている。

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