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私のクリエイティブディレクション論

コピーライター 岩崎俊一 広告づくりのルール

岩崎俊一

コピーライターとして、さまざまな企業のメッセージを数多く手がけている岩崎俊一さん。長年にわたる広告の仕事で、常に追求しているのは、企業や商品の普遍的価値。その軸足はぶれることがない。

いわさき・しゅんいち
コピーライター、クリエイティブディレクター。1947年京都市生まれ。70年同志社大学文学部文化学科心理学専攻卒業。レマン、マドラなどを経て79年岩崎俊一事務所を設立。TCC賞、ACC賞、ギャラクシー賞大賞、読売広告賞、朝日広告賞、毎日デザイン広告賞、日経広告賞、カンヌライオンズほかを受賞。近年は、雑誌などでエッセイも執筆。著書に『幸福を見つめるコピー』。

つくり手の信念と柔軟な心がよい広告をつくる

――岩崎さんのクリエイティブディレクションは、言葉から始まりますか。

そうですね。オリエンを受けて、これは映像かなと思うときもあるのですが、最近は特に企業メッセージを書いてほしいというオーダーが増えています。企業の業種は多岐にわたりますが、どんな業種であろうと基本はひとつ。その企業、あるいは商品が持つ本質的価値、普遍的価値を見出し、突きつめていくこと。どんな仕事でも、まずはその作業から始まり、それが僕のクリエイティブディレクションの核になっています。

僕の場合、スタッフと話しているうちに自然とコピーができることが多いんです。「きたえた翼は、強い。」(全日空)、「やがて、いのちに変わるもの。」(ミツカン)、「今日を愛する。」(ライオン)など、ほとんどそうですね。一緒に仕事をするスタッフも本質的価値、普遍的価値を大事に、言葉を中心に置きながら考えていきます。そして、企画書には僕がオリエンを聞いて思ったこと、感じたことを正直に書きます。企画書はクライアントへのお手紙のようなもので、「ここは変だと思うのですが」みたいなことも書く。まさに僕の肉声であり、ボディコピーの原型ともいえるものです。だから、そこに書かれたことに魅力がなければ受け入れられないと思っています。

――企画書を書く際には、正直であることのほかにどんなことを大事にしていますか。

池上彰さんの番組を見ているとき、なるほどと思ったことがあります。池上さんの番組はテーマが違っても、圧倒的にわかりやすい。池上さんの解説を聞いた人は思わず「わかる、わかる」と頷いてしまう。いったんわかり始めると、自分も番組に参加している気持ちになって、頭の中が充実し、番組を見るのがますます楽しくなる。つまり「わかる」ということはテレビを見る人、ラジオを聞く人にとって、とても強力なエンターテインメントになる。あるとき、そのことに気づいたのです。それは企画書やボディコピーでも同じで、読む人、聞く人にとって最大限にわかりやすいことが大事。さらに言えば、読んでいくうちに、内容の一つひとつが腑に落ちていくものでなければならない。企画書をまとめるときに、そのことを一番気にして書いていますね。

ほかには、もちろん企画やコピーが面白いかどうかです。言っていることは正しいけれど、ちっとも面白くないコピーっていっぱいある。それではだめですね。もちろん嘘をつかない、正しいことを伝えることが広告の基本ですが、ものには言いようがある。それはコピーの妙技のようなもので、その言いように人が惹かれるのだから、やはり面白くなければいけない。同時に、このコピーを読んだクライアントがうなるか、世の中に出たときに反響を起こせるかということも、制作過程では何度も自分に問いかけます。これはなかなか難しいところですが。制作中はいつもつくり手としての自分、クライアントの立場に立った自分、そして消費者としての自分、という三者の立場を行ったり来たりしながら考えています。

――CDに求められる資質とは?

これまで自分をクリエイティブディレクターであると意識したことはほとんどありません。コピーライターとして参加し ...

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