2020年の東京オリンピックでは何が起きる?クリエイティブ産業とテクノロジーの視点から、2人のクリエイターが予測する。
スポーツの祭典は、クリエイティブの祭典にもできるか?
文・境 治
東京から世界にデモンストレーション
去年開催されたロンドンオリンピック。その閉会式を皆さんは見ただろうか。産業革命を中心に英国の歴史をショーとして見せた開会式も素晴らしかったが、閉会式は「A Symphony of British Music」のタイトル通り、壮大な音楽の祭典だった。しかも演奏されるのは古典ではなく、ビートルズをはじめとする現代のポップミュージックの数々。デヴィッド・ボウイ、クイーン、スパイス・ガールズ、極めつけは老いを感じさせないザ・フー。このときあらためて、我々が親しんできた海外のヒット曲は米国よりむしろ英国中心だったのだと気づいた。それに加えてスーパーモデルのファッションショーや、モンティパイソンのコメディ芝居など多様なパフォーマンスも展開された。閉会式は、音楽のみならず英国クリエイティブ産業の一大デモンストレーションの場と化していたのだ。
クリエイティブ産業は英国で1997年から唱えられた政策で、音楽やアート、デザイン、広告、建築や工芸など多様な分野の産業をこの言葉で括って活性化させるものだ。その結果、十年間で該当分野の付加価値額を倍化したと言われる。オリンピックでのデモンストレーションは、その成果を世界に印象づける催しだった。
2020年に東京でオリンピックが開催されることは、日本のクリエイティブ産業にとっても大きなチャンスにできるはずだ。そもそも「Cool Japan」という言葉も、英国の「Cool Britannia」に倣って生み出された言葉だ。東京オリンピックでもロンドンを参考に日本なりの"クリエイティブ産業"をデモンストレーションするべきではないだろうか。単にオリンピックで一時的に盛り上がるのではなく、オリンピックをメルクマールとしてクリエイティブ産業を7年間盛り上げていくのだ。