IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

           

成功のカギは現場の実現力にあり

想いのリレーを映像に収める

KITTE開業記念アートプロジェクト「想い桜」

桜の季節である今年3月にオープンした商業施設「KITTE」の施設内に、開業と共に巨大な桜の絵が飾られた。KITTEが旧東京中央郵便局の敷地に建つJPタワー内にオープンしたことにちなみ、この桜の絵は人々の想いを届ける役割を担っている。

01 KITTE1階の吹き抜けスペース「アトリウム」に飾られた「想い桜」。縦10メートル、横8メートルの巨大なキャンバスに滝桜が描かれ、絵の上には集まったメッセージを投影。1万通を超えるメッセージが寄せられた。

つながりの象徴としての“滝桜”

今年3月21日、「KITTE」の開業に合わせて、施設内に1本の桜の木を描いた絵が姿を現した。開業記念アートプロジェクトとして公開されたこの「想い桜」は、日本画家の千住博さんが桜の枝をスケッチし、そこに一般公募で集まった人々が桜の花を描き足したもの。福島県三春町にある滝桜をモデルに描かれた。

滝桜を描こうと決めたのは千住さん。1000年以上にわたって地元で大切にされ、受け継がれ、さまざまな喜びや苦しみの中で存在し続けたこの桜を、「人々のつながりの象徴」のように感じたからだ。

開業から4日間は「大切な人へ届けたい想い」をWebサイトで募集し、寄せられたメッセージを「想い桜」に投影するインスタレーションを実施した。

同プロジェクトを手がけるにあたり、「郵便局の敷地にできる」という場所の力を生かした企画にしたいとクリエイティブディレクターのドリル 細川直哉さんは考えた。「郵便局とは、手紙という人々の想いが集まり、それが各地へと届けられていく場所です。それをいまのテクノロジーを使い、いまという時代に合ったやり方で再現しようと考えました」。

そこから生まれたのが、Twitterやメールで人々の想いを集め、ハガキとして各地へ届けるアイデア。春という季節も相まって、その様子は桜の枝に花が咲き、散っていく姿とも重ね合わされる。

そんな同プロジェクトをコンテンツ・プランナーのドリル 西田淳さんは「人から人へと伝えられていく“想いのリレー”」だと例える。「三春町の人々が持つ滝桜への想いを、桜の絵を描く人々へ伝える。そこに一般の人々から集めたメッセージが乗り、大切な人へと届けられていく。プロジェクトの一部始終を映像作品として収めるにあたり、核になるこの“想い”を漏らすことなく、ドキュメンタリーとして映像に残すことが大きな目標でした」と振り返る。


02 三春町に住む人々へのインタビューから、ハガキが実際に人々のもとへ送り届けられるまで、プロジェクトの一部始終がドキュメンタリーで映像に収められた。

絵を描く人へ想いを伝える

映像制作にあたり、まず取りかかったのは、三春町の滝桜の住民に取材し、滝桜への想いを聞き出すこと。チームには福島県出身の太陽企画 前田径成さん(プロダクションマネージャー)が加わり、地元のネットワークを生かして滝桜のそばに住む人々を探した。

あと44%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

成功のカギは現場の実現力にあり の記事一覧

想いのリレーを映像に収める(この記事です)
雲に映し出された150メートルを超える映像
300台のミニカーが描くスバルの夢
「未来のパーティ」を実現したロボットバンド
一瞬の世界に没入する3分間
ささやき声のようにカルメンを奏でる静かな演奏会
実験により知見を蓄える

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
ブレーンTopへ戻る