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EDITOR'S CHECK

気になるデザイン

今月のブックデザイン/ロゴ/CD/ツール/パッケージ

編集部が街で気になった様々なデザイン


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川上未映子『りぼんにお願い』

(マガジンハウス)

AD+I/千原徹也撮影/今城純
ST/飯嶋久美子HM/岡田知子

『Hanako』で連載中の川上未映子さんのエッセイを書籍化した『りぼんにお願い』のカバーには、川上さん本人が登場している。デザインを手がけたのは、れもんらいふ 千原徹也さん。「これまでの書籍でやったことがない」こととして、川上さんが希望したのは「自ら表紙に出る」こと。そして日々のできごとや気持ちを綴ったエッセイゆえに、“女の子らしい”デザインにしたいというリクエストも受けた。

千原さんが選んだモチーフは、「りぼん」をイメージさせる赤いワンピース。さまざまな表情を見せる川上さんが並ぶことで、赤いワンピースが1本のりぼんのように見える。帯を外すと、ロング丈のワンピースがミニ丈に変わるというサプライズも仕込んだ。デザインで意識したのは、かわいく元気すぎるトーンにしないこと。カバーにはあえて色が少し沈む紙を使い、ダークなトーンを強くした。

文中のイラストも、千原さん。「デザインも、イラストもすべて川上さんの文章に対峙する気持ちで臨みました」。両者にいいコラボレーションが生まれたことは、本の後書きからも伝わってくる。


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DJみそしるとMCごはん「Mother's Food」

(平野ゼミ)

企画/DJみそしるとMCごはん撮影/石橋雅人
D/竹野匠印刷・加工/栄久堂

スクランブルエッグ、白和え、牛乳かん......さまざまな料理のレシピをラップで歌う「DJみそしるとMCごはん」。“くいしんぼうHIPHOP”を掲げた初のアルバムは、そのユニークなラップと共に、ジャケットにも注目が集まった。ターンテーブルを模したケースの上に重ねられたのは、お皿の形のカード。それぞれの皿に盛られた料理はCDで歌われたレシピ通りに作られており、裏面は回しながら読む歌詞カードになっている。このパッケージを発案したのは、DJみそしるとMCごはんさん本人(実は一人の女性)。ジャケットのイラストも料理も自身が手がけた。「DJがレコードを“お皿”と呼びますよね?だから、お皿に料理を載せてターンテーブルの上で回せば、“料理のヒップホップ”であることが伝わるのではないかと思ったんです」。

特殊な本を手がける製本所 栄久堂が企画段階から協力、最初のイメージを具体的な形に仕上げた。エンジニアには料理の写真を渡し、そのイメージを元に音の質感を調整してもらい、「ジャケットを見て音を聴くと、思わず料理がしたくなるアルバム」が完成した。


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店頭ツール、カタログ

(BRIDGESTONE GREEN LABEL)

企画制作/ティー・ワイ・オー+ドラフトAD/平野篤史、天宅正D/川上恵莉子C/伊坂真貴子

ブリヂストンサイクルは今年、従来の4つのブランドに新ブランド「CHERO」を加えて、「BRIDGESTONEGREEN LABEL」(以下グリーンレーベル)をスタートした。ターゲットは20~30代の男女、街中での活用を見込んでいる。レーベルのキャッチフレーズは、「自由と、おしゃれと、ブリヂストン。」。その言葉通り、コミュニケーションでは機能よりも「自転車に乗る気分」を伝えることを重視し、「自転車もおしゃれアイテムのひとつとして、洋服のように選んでもらいたい」と考えたことから、カタログや店頭ツールを従来のものから大きく変えた。

カタログ、店頭ツール、そして同じ世界観で展開しているWebサイトの制作にあたっては、各ブランドのスタイルや気分をしっかりと伝えること、そして“乗る人が見える”表現を重視した。何よりも新レーベルのあり方を象徴するのが、カタログやタグに使われているイメージ写真だ。自転車の周りには、シャツや靴、バッグやメガネ、ときにはポータブルプレーヤーや地球儀など、各自転車ブランドのイメージに合わせたモチーフが置かれている。カタログの写真を見た瞬間に、“これは自分のスタイルに近い”と思ってもらうために、各ブランドの特性から乗る人のファッションや生活スタイルなどを具体的に考え、それに合うモチーフやモデルを選んでいる。“ファッション”にこだわり、撮影は『VOGUE』などで活躍する齋藤弦さんに依頼し、従来にはない自転車写真を撮った。

タグの裏とカタログには、ブランドごとにチェック項目も設けられている。トラディショナルなデザインが特徴の「CHERO」の場合、「ヨーロッパの街並みが好き。」「流行よりも、永く愛せるもの。」「年齢をかさねることも人生のたのしみ。」といった項目が並ぶ。スタイルを重視しているので、機能説明は一切書いていない。

カタログには機能説明ページを設けているが、ここではイラストを活用し、専門用語は使わずに平易な言葉で説明。CHERO各車種のPOPではそれぞれのイメージに合うモデルの顔写真を入れながら、さりげなく車種の特徴を伝えるなど、自転車初心者でも抵抗なく受け入れられるよう細かく配慮している。

グリーンレーベルは今夏、カメラ雑誌と組み、自転車とカメラの新しい楽しみ方を提案。さまざまな面で、自転車の新しいあり方を積極的に打ち出している。


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「T五」

(薄氷本舗 五郎丸屋)

AD+D/宮田裕美詠C/高橋修宏撮影/小野田陽一
印刷/山田写真製版所

富山県の老舗和菓子店 薄氷本舗五郎丸屋の「薄氷」は200年前につくられ、お茶席で主に使われている干菓子。それをベースに普段でも楽しめるものとして開発されたのが「T五」だ。グラフィックデザイナー 宮田裕美詠さんは商品開発から参加し、クラフト紙を使ったパッケージをデザインした。「富山のお土産ということだけではなく、日本から海外へ持っていきたくなるお土産にしたいと思いました。菓子自体のデザインはプロである先方の意向を尊重しながら話し合い、新鮮な印象と200年前からありそうな雰囲気をあわせもつものにしたいと考えました」。

宮田さんは、オシャレでかっこよくなりすぎないパッケージにすること、包装を開けていく過程が楽しめること、そして開けた後は、簡単に捨てられる潔さを持たせようと決めた。さらに菓子を楽しむ時間が豊かになるように、同店の近所の風景の写真と作り手をイメージした物語を納めたリーフレットを制作した。発売後、感度の高い女性たちがすぐに反応。デザイン性の高いショップや県外からの引き合いも増えている。


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Orbi

AD/セガ+BBCワールドワイド

今年8月、横浜みなとみらいに誕生した大自然体感ミュージアム「Orbi」。最先端のテクノロジーを使って大自然を楽しくダイナミックに紹介する、新しいエンタテインメント施設だ。そのロゴは、これまでに見たことがないユニークな形。同施設を運営するセガとBBCワールドワイドが共同制作した。「ロゴ自体がまるで生き物のように、愛嬌があり、カラフルでかわいらしく、親しみやすいデザインを意識しました」と、セガOrbiクリエイティブディレクター 谷川敦彦さんは話す。

ロゴはアルファベットの「O」「r」「b」「i」の形状をベースに、いまにも動き出しそうな躍動感、生命感を持たせた。自然界にさまざまな形状や色彩があるように、映像で使うロゴも自由に動き、さまざまな形に変化する。「Orbiの存在自体が斬新でユニークであるため、他にはない個性を感じてもらうことを意識し、文字として読めることよりも、斬新な形状を記憶に留めてもらうことを優先しました」(長谷川さん)。

このロゴは、これまでにない新しい施設に注目を集めるきっかけになっている。

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