2011年11月末に経営破たんしたアメリカン航空。USエアウェイズとの合併を筆頭に、現在、経営再建中だ。今年1月には、ブランドアイデンティティを改定。社員らの貢献を重視し、再生の勢いを加速させている。
傷を負った「アメリカの鷲」
「エキサイティングなニュースがある。今朝9時から行うビデオプレゼンテーションを見るように」――1月17日の早朝5時、アメリカン航空のトーマス・ホートン会長兼CEOから全社員に送られたメールだ。40年以上の歴史があるブランドアイデンティティを一新するという知らせ。翌18日、ブランドカラー、書体、制服、すべてが生まれ変わった「アメリカの鷲」の姿が公開された。
アメリカン航空にとって今回の件は、単なるブランドリニューアルにとどまらない。2001年のアメリカ同時多発テロ事件や、05年「ハリケーン・カトリーナ」による石油価格高騰は、米航空大手各社を手ひどく打ちのめした。各社は経営破綻し、買収・合併によって業界が再編された。
同様の痛手を負いながら、耐え忍んでいたアメリカン航空も11年11月29日、連邦破産法の適用を申請。事実上、経営破たんする。現在もUSエアウェイズとの合併申請やサービスの改定を進め、再建中だ。他方、運航は通常通り行っており、合併で巨大化したデルタ航空ほか、競合他社との競争力も高めなくてはならない。新アイデンティティは、ブランドの画期的な変化を示す、再生への旗印だ。
刷新を担当したマッキャン・ワールドグループ傘下のブランドコンサルティング会社FutureBrandの戦略のシニアディレクター、カーリ・ブランチャードさんは、「素晴らしいブランドは、社内から生まれるもの。アメリカでは多くの企業が、ブランド戦略における社員ケアの重要性に気づきはじめています。社員は、大切な『オーディエンス』かつ『ブランドの体現者』ですから」と語る。
そこでFutureBrandのブランドアイデンティティ改訂チームは、フォーカスグループインタビューやWeb上のディスカッションフォーラムを通じて、社員や乗客へのヒアリングを重ねた。