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私のクリエイティブディレクション論

勇気と大胆な心が 新しい広告を生む

アジャブ・サムライ(オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンCCO)

第一線のクリエイティブディレクターが考える、CDの役割とその理想形とは。
今回は、7月からオグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したアジャブ・サムライさんが登場。イギリスを中心に、各企業のグローバルキャンペーンをディレクションしてきた立場から、CDのあるべき姿をどうとらえているのか聞いた。

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AJAB SAMURAI
1987年 サーチ アンド サーチ ロンドンに入社、アートディレクターとしてキャリアをスタート。ソニー、ブリティッシュ・エアウェイズ、ゼネラル・ミルズ、Tモバイル、VISA、パンパースなどの大手グローバルブランドに携わり、2億ポンド(約300億円)に値する新規ビジネスの獲得に貢献。90年代はじめ、英国で人種差別反対のコミュニケーションの先駆者となり、人種平等委員会の政府の仕事で多くの賞を受賞。オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンCCO就任以前は、WPPでボーダフォン・ビジネスのグローバル・クリエイティブ・ディレクター。これまで100を超える広告賞を受賞。17~19世紀のインド美術の熱心なコレクターでもある。

勇気と大胆な心が新しい広告を生む

――アジャブさんが考えるCDの役割とは。

CDは、インスパイアする、つまり人にひらめきを与え、かき立てる人でなければなりません。スタッフだけでなく、クライアントや他のステークホルダーなどあらゆる人をインスパイアし、不可能を可能にし、あらゆるブリーフの限界を超えていくチームをつくりださなければなりません。常に新しいものをつくり、新しい実験を試みるスピリットが求められます。

そのためには、ときにはリスクをおかすことも必要です。私は26年前、ロンドンのサーチアンドサーチから広告クリエイターとしてのキャリアをスタートしました。当時私を同社に招き入れてくれたのは、伝説的なECDとして知られる、ポール・アーデンでした。まだ私がジュニアの頃、彼は盛んに「リスクを取れ」と言っていました。その頃は、クライアントワークでリスクを取れだなんてどういうことだろう?と思ったものですが、いまはその意味がわかるし、部下にも同じように言っています。挑戦によって学べることは多くあります。10回中9回失敗したとしても、その経験を生かして10回目に正しく行えば、魔法が起きます。見たことのないクリエイティブや、素晴らしい広告は、勇気や大胆な心から生まれます。無難を求める心や、これまでの繰り返しからは、何も生まれません。

――ご自身のディレクションの特徴は何だと考えますか。

私は、プランニングに十分な時間をかけます。つまり戦略的に考えることを重視しています。具体的な表現を考えるのと同じくらいの時間と労力を、ブリーフをじっくり分析し、突きつめることに費やします。秀でたクリエイティブのベースには、必ずしっかりとしたブリーフが存在します。いいブリーフは、言いたいことがはっきりとしていて、必ず美しいインサイトを含んでいます。ブリーフの段階で他の人と違う考え方ができれば、アウトプットもおのずと新しいものになる。クリエイティビティのためのクリエイティビティは、時間の無駄です。我々がつくりだすクリエイティブは、商品やサービスを売るためにある、ということを忘れてはなりません。

インド人である私の父は、子どもの頃、私に美味しいカレー作りの秘訣を教えてくれました。インドではたくさんのスパイスを調合してカレーを作りますが、その調合に時間をかけることこそが一番大事だと。広告も同じです。プランニングを念入りにすることにより、それを最後に組み合わせたときに、素晴らしい味わいになるのです。

私のもうひとつの特徴は、自分自身が腕まくりして、現場に1人のプレイヤーとして関わっていくことでしょう。模範を示しながら、同時に指導をしていくというやり方もまた、60代でも大きな賞を受賞している、偉大なポールから学んだことです。だからいまでも、D&ADなどの広告賞に自分の作品をエントリーしています。ECDであろうとCCOであろうと、常に挑戦し続けなければなりません。クリエイティブの現場は、想像力をかき立てられ、誰にも取り上げられたくなくなる子どもの“TOY”(おもちゃ)のようなものなんですよ。

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