独自データを活用したスマートフォン向けアドプラットフォームの構築・運用に強みを持つSupershipと、情報キュレーションアプリ「グノシー」を運営するGunosyが業務提携し、新たな広告サービス「Gunosy DSP」を立ち上げた。マーケターの間で注目が高まるデータドリブンマーケティングにおいて、いま求められることとは? 同サービスを積極的に活用するDeNAとともに、意見を交わした。
データマーケティング成功のカギは高精度のデータと配信技術
――DeNAが、Gunosy DSPに出稿する理由を聞かせてください。
今西:Gunosy DSPに出稿を決めた理由は、大きく二つあります。まず、ニュースアプリ「グノシー」のオーディエンスデータを使って広告配信ができる点。アプリ内への広告配信は以前から実施しており、高い効果を得られていたので、記事閲覧データを用いた外部配信も、一定の効果が得られるだろうと考えました。また、独自データを活用したスマートフォン向け広告配信に強みを持つSupershipと連携して構築されたものですから、期待値は高かったです。スマートフォン向けゲームのデジタルマーケティングを統括する立場として、私のミッションは、(1)ダウンロード数を伸ばす、(2)継続的にプレイしてもらう、の2つ。新しいゲームが生まれては淘汰されていくゲームアプリ業界で、それを実現するためには、精度の高いデータでターゲティングし、精度の高い配信で広告を確実に届ける必要があります。
長島:Gunosy DSPは、Supershipの「ScaleOut DSP(スケールアウト)」に、当社が運営するグノシーと、当社子会社が運営するゲーム攻略プラットフォーム「Game8(ゲームエイト)」の閲覧データを連携させて構築しています。これにより、グノシーのアプリ内で、グノシーユーザーに対して広告配信するだけでなく、グノシーユーザーや、それに近い属性のユーザーに対し、外部サイトで広告を配信できるようになりました。これを活用し、直近でDeNAと試験的に行った広告施策は2つ。一つは、グノシーの閲覧データを基につくった、DeNAのスマホゲームと親和性が高そうなセグメントへの配信。もう一つは、ゲーム好きが集まるゲームエイトのCookieデータを基にした配信です。
今西:DeNA のプラットフォーム「Mobage」のオーディエンスデータを用いた外部サイトへの広告配信は、2~3年ほど前から実施してきました。例えば、FacebookやTwitterの広告プラットフォームにMobageのユーザーデータを入れ、アクティビティの高いユーザーと属性が近いターゲットに配信するという形です。一方で他社のオーディエンスデータを活用した配信も数多く行ってきましたが、目立った効果を得られずにいました。とは言え、より幅広いターゲットにアプローチする必要性は強く感じていました。
長島:グノシーのオーディエンスデータを用いて外部配信を行いたいという企業は、近年増えていると感じます。というのも、グノシーのユーザーは、グノシーのアプリだけを一日中見ているわけではありません。ユーザー一人あたりのスマホ利用時間は2~3時間/日と言われますが、その時間に絞って見ても、グノシーだけを閲覧しているわけではなく、SNSや動画、ゲームなどさまざまなサービスを利用しています。そのため、グノシーユーザーが、グノシー以外のサイトやアプリに接触しているタイミングにリーチするのは、非常に有効だと思います。
今西:スマホ関連のビジネスは、消費者の可処分時間の奪い合い。しかも戦況は刻々と変化していきます。オーディエンスデータを保有しているグノシーは、ユーザーのグノシー内外での行動をリアルタイムに可視化し、変化に合わせて広告・コミュニケーションを展開することができる。それは、データ保有企業の強みであり、広告主がそのデータを活用したいと考える最大の理由でもあります。
データ保有企業の新ビジネス創出とマーケターの課題解決を両立
――GunosyだけでDSPを構築するという選択肢もあったのでしょうか?
長島:「Gunosy Promotion Ads」「Gunosy Network Ads」「Gunosy Premium Ads」といった既存の広告プロダクトは、100%自社開発で提供しています。しかし、DSP市場はすでに競争が激しく、我々が今からそこに膨大な費用や時間を投じるのはリスクがあると感じていました。そこで、DSP構築・運用で実績のあるパートナーと組み、我々は自社の資産であるデータの収集・整備にフォーカスしようと考えたのです。なかでも、正確な属性データを用いたアドプラットフォーム構築・運用で実績のあるSupershipは、グノシーのデータの価値をさらに高めてくれるのではないかと。
宮本:アドプラットフォームのOEM構築を手がける事業者は少なく、なかでもスマホに最適化した戦略をとっているのは当社だけと言っていいと思います。ユーザーデータを活用したアプリ含むスマホ向けの広告配信は、広告主のニーズが今後ますます高まり、市場が拡大していくと予想されます。こうした中、当社と、データ保有企業であるGunosy、そして広告主であるDeNAの3社が連携し、新しい広告サービス・Gunosy DSPを開発、運用改善を進めているところです。これまでは当社のDSPをほぼそのままご利用いただく形が多かったのですが、最近ではGunosyと同様、当社の独自データと、データ保有企業の独自データを連携させる例が増えています。メディアのみならず、ユーザーデータを蓄積している企業が、そのマネタイズを考え始めているのは間違いありません。データ保有企業が、新しいビジネスによってこれまでにない利益を生み出せるよう、当社の知見を生かしてサポートしたいと考えています。
今西:DSPを効果的に運用するためのポイントは、(1)高精度のユーザーデータ、(2)質の高い配信面、(3)質の高いクリエイティブの3つだと考えています。「消費者の可処分時間を確保できている場(配信面)」で、「適切なターゲット(データ)」に配信することが重要ですから、(1)(2)はSupershipとGunosyの力を借りてPDCAを高速回転させ、最適化していきます。これに加え、広告主としては(3)のクリエイティブという変数でいかに差別化するかという視点も重要。静止画に加え、工数のかかる動画も積極的に活用するため、広告会社や制作会社との効果的な連携のあり方も模索しているところです。
宮本:データ保有企業や広告主と、これほど密に連携しながらDSPを運用するのは初めて。既存の広告商材を運用しているだけでは、他社がすぐ追随してきます。どんどん新しいことに挑戦しないと、差別化が難しくなるのがデジタル広告の難しいところですよね。
今西:アプリマーケティング領域は、最新の手法が半年後には廃れてしまう…なんてことが珍しくありませんから、今回のようにソリューション企業やデータ保有企業と連携しながら、マーケターが自ら「マーケティング手法をつくっていく」感覚を持たないと、効果はすぐに目減りします。
宮本:アドプラットフォームを提供するソリューション企業として、データ保有企業のデータのマネタイズと、広告主のビジネス上の課題解決の両方を実現することを目指しています。消費者のスマホシフトが急速に進むなか、スマホに特化したデータの蓄積やアドプラットフォームの構築・運用を突き詰めてきた当社の知見・技術が生かせると考えています。
Gunosy 執行役員
マーケティング本部広告事業部 長島徹弥氏
Supership
広告事業本部長 宮本裕樹氏
DeNA デジタルマーケティンググループ
グループマネジャー 今西陽介氏
お問い合わせ先
Supership株式会社 アドプラットフォーム事業部
TEL:03-6365-6755 E-mail:so-sales@supership.jp