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スタートアップ座談会

来たる踊り場にどう対応?―「スタートアップ座談会」後篇

デジタルテクノロジーを活用し、従来の日本企業が想定する以上のスピードで急成長を遂げるスタートアップ企業。工場など固定した資産を持たず、市場環境やユーザーのニ-ズに素早く対応した展開が強みの一方、競合他社との絶え間のない戦いもあり、常にスピードが求められる。古くからの資産があり、なかなか身軽にデジタルシフトを遂げられない従来企業とは、異なるマーケティング思考があるのではないか。座談会を通じて考える。

スタートアップの成長過程で出現する課題と解決策

─スタートアップ企業ならではの課題やご自身の会社で抱えている問題はありますか?

西澤▶ 組織が成長すると、いろいろな人が入ってきます。意識のすり合わせや、意思の疏通が難しくなってくるとよく聞くのですが、そうした社内の意識の統一を皆さんはどのようにしているのでしょうか。

河野▶ 確かに、誰が何をやっているかが以前であればすぐ分かり、コミュニケーションコストもかかりませんでしたが、人が増えてくるにつれて、ノウハウの共有やシェア、誰がどういった施策を進めているかなどが、見えにくくなっています。以前は社員数が少なかったので、個々人が自走してプロダクトの改善や施策の実施を行っていました。しかしチームメンバーを増員したことで、そういった情報共有の不足が非効率さを生み出していると感じています。我々のチームでは、まずはコミュニケーションの量を増やすために、検討中の施策や施策実施後の効果などを共有できる場をつくり、情報共有の活性化に向けた取り組みを強化しているところです。

宮下▶ 当社はまだ社員数50名ほどですが、まさにそうした課題が起き始めていて、先に手を打たなければならないと感じているところです。いまは会社のビジョン浸透や、カルチャーを皆でつくっていくという意識の統一に、とても気を遣っていて、マネージャー研修や合宿などコミュニケーションをより濃密にしていこうと考えています。人材育成に関して言えば、当社は異例なほど、インターン生に権限を持って働いてもらっているんですよ。大きな権限と責任をもって活躍してもらう分、みんな目覚ましいスピードで成長します。成長を支援する上で、ビジョンや「なぜやるのか」と言ったことを徹底的に共有するようにしており、それが会社の文化・ビジョンをより強固なものにしてくれています。ただ、どうしても学業や就職の都合上、1~2年で多数のメンバーが入れ替わってしまうため、ノウハウの蓄積や継承が組織課題として大きなテーマになっています。

林▶ 当社はいま社員数が約150名まで増えましたが、それ以上のスピードで成長しているので、人材は足りていない状況です。なかなか求めているスキルの人材が採用できていないという課題もあるのですが、インターン生にうまく活躍してもらっているというのは凄いと思います。採用の課題感について、ChatWorkさんは何か感じてらっしゃいますか?

西澤▶ 我々は、ほとんどが中途採用なんですが、社風として、やりたいことを仕事にするということを大切にしています。みんなが得意分野を上申して、理にかなっていればやってみよう、という感じなので、特に課題はないかもしれませんね。

河野▶ そういう社風の中では、未経験者が面接に来たときに、ここだけは見ておこう、聞いておこうというポイントってありますか?

西澤▶ 会社の文化に合うかどうかが一番大切だと思います。考え方と社風のマッチングですよね。いわゆる働き方を変えるということに、熱意を持って取り組める人かどうか。能力、ノウハウは、チームのフォローもあり、あとからでもついてくると思っていますので。気持ち的な柔らかい部分で波長が合うかどうかですね。私自身も全く畑の異なる音楽業界から来たわけですから。

宮下▶ 我々も採用はビジョン共感、カルチャーフィットを重視していますが、当社では意識的にジョブローテーションをしています。インターンでマーケティングの仕事をずっと任せていた子を新卒で採用したんですが、入社後はいきなり営業に配属したり(笑)。活躍してくれましたが、1年後に今度は人事部に異動させたりと、かなり激しいと思います。当社では会社の組織を変えるのは「採用」と「異動」と定義していますので、「肉を斬りながら骨を断つ」ように異動させています(笑)。それにしても採用・育成は各社、悩ましい課題だと思いますが、ほかに皆さんは、どんな課題感をお持ちですか。

林▶ 社員数の増加に伴い、さまざまな面でスピードが落ちることを感じます。システム開発に関しても、以前ほどのスピードが出せない、前はできたのに今はできないと、特にお客さまと向き合っているチームがその点を課題に感じていると聞いています。成長の痛みだなぁと実感しますが。

宮下▶ 当社でも、会社が成長して規模が大きくなると指数関数的にスピードが落ちるのは理解しているので、その落ち幅をいかに少なくしながらやっていくかを意識しながら取り組んでいます。

林▶ サービスを改善する際に、「短期的にはこうした方が速いけれど、長期的にはこうした方が良いな」というケースがありますよね。特に開発においてはそうだと思います。エンジニアの想いとしては、絶対に長期的にキレイなソースコードをつくりたいはずなのに、お客さまと直接向き合っている担当からは早くリリースしてほしいと依頼されることもあります。そこの優先順位付けが難しくなっていることが社内で起きています。クラウドの波は徐々に大きくなってきています。しっかりお客さまをつかまえて拡大していくには、やはりスピード感を保ったままでないと簡単ではないと感じています。

宮下▶ 会社としての課題で言えば、「自分たちのサービスでないとならない」理由の追求というのがあります。reluxは、宿泊予約サービスという業界では、一番後発なんですね。客観的に見たら他の予約サイトにも似たような情報は載っているので、なぜ我々のサービスを使っていただくかは非常にエモーショナルな領域になってきます。「reluxを使って旅行に行けば間違いない」という体験の質が強みなのですが、実際に体験してもらうまでは100%伝わりきらないというのが悩みです。

西澤▶ よくわかります。うちはLINEの普及に伴って、チャットでコミュニケーションをとるということへの啓蒙はそこまで必要ではないのですが、ビジネス上でチャットを活用するとなると「それはどうなのかな?」と感じる方もまだ多くいて。サービスの利便性をどう伝えたら納得してもらえるか、悩んでいます。マネーフォワードさんはそうした悩みはありますか?

河野▶ 多くの方が、会計ソフトでどんな課題を解決できるかということは理解されているのですが、それをクラウドで管理するとか、そのために自社の金融機関の口座情報をネットで連携させたりすることに関して、税理士業界にはまだ抵抗がある方がいらっしゃるので …

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