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広告を「読む」。

au「三太郎」シリーズ、大ヒットの秘密を「ターゲティング」から解剖

山本高史

広告を読めば、なんかいろいろ見えてくる。例えば「ターゲット」のこと。

KDDI 2015年~
クリエイティブ・ディレクター 篠原誠

以前ある企業で講演をした時、前列の若い男性の出席者から「さっき見たヤマモトさんのテレビCMのどこがいいのかわからないのですが」という質問(と言うか何と言うか)を受けた。「さっき見た」のは、内視鏡検査をテーマとした「たいせつな人のために、私はたいせつ。ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ。オリンパス」という企業広告。とりあえず3つ数えて気持ちを落ち着かせて、どこがわからないのかと声を裏返らせて逆に問うたところ、どうやら「まったくわからない」らしい。

そのあたりで、ぼくは彼に関してあることを確信する。「失礼ですがおいくつですか?」「20代。未婚。人間ドック経験なし」とのこと。はあ、そういうことね。まあいいよ、それが広告に対する受け手のあたりまえの気持ちと態度だから。「広告って、そういうものなんですよ」と、ぼくは年長者らしい柔和な笑顔で言った(つもり)。

広告にはターゲットと称されるある属性や気持ちの傾向を持つ人々をあらかじめ想定していて、その人たちに向けてモノやサービスのベネフィットを約束する。つまりターゲット以外の顔色を見る必要が、基本的にはない。楽しませる義務もないのだと思う。だから、逆に自分がターゲットでもない広告を受けるハメになる人にしてみれば、自分にさほど関係のない話(しかも「どうだ、いいだろう」という自慢話)を延々(15秒間)聞かされることになる。ウイスキーを飲まない人には、ウイスキーの広告の登場人物が、何が楽しいのかわからないのかもしれない。髪の毛に悩みのない人には、育毛剤のテレビCMなど、どこかの誰かの他人事である。

広告は総体としては社会全体にも匹敵するサイズのコミュニケーション活動ではあるが ...

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