広告マーケティングの専門メディア

           

米国広告マーケティング事情

注目度上昇中、屋外広告の新たな可能性

松本泰輔

眩しいデジタルサイネージが、歩行者の目を奪うニューヨーク、タイムズスクエア。The New Yorker誌によると、一日平均33万人が行き交い、年間5000万人の観光客が訪れるという。いまやニューヨークの景観の一部とも言える、屋外(Out Of Home:OOH)広告。その効果を、データを活用することでさらに高めようという動きがある。

1. Clear Channel Outdoor 社 「RADAR」
スマートフォンのGPSを利用し、ビルボードの前を通過した人の行動データを収集・分析。OOHキャンペーンの効果測定や戦略立案に役立てるべく、結果を広告主・メディアバイイング社にフィードバックする(写真:clearchanneloutdoor.com)。

スマートフォンで行動履歴を追跡

全米最大手のOOH会社「Clear Channel Outdoor(CCO)」は2月末、看板広告の前を通過した人が、その後どこで何をしたのかをトラックし、そのデータを供給するサービス「RADAR」を開始すると発表した 1.。例えば、デパートのセールの屋外広告を見た歩行者が、その後そのデパートに入店したのか、あるいは他の店へ行ったのか。ハイウェイでレストランの看板を見たドライバーが、次のドライブインでそのレストランに入ったのか、または別の店に入ったのか。こうした行動データを広告主にフィードバックする。これにより広告主は、屋外広告キャンペーンの効果測定や、より細かいターゲティング戦略を立案することができる。

これらのデータは消費者のスマートフォンを使ってトラックするもので、CCO社は「AT&T Data Patterns」「PlaceIQ」「Placed」社とパートナーシップを組んでデータの回収・分析を行う。データは消費者の個人情報保護のため匿名だが、「性別」「年齢」など基本項目は開示されるため、広告主にとって貴重なデータとなる。CCO社 リサーチ&インサイト担当上級副社長のアンディー・スティーブンス氏は「これらのデータはOOHを見た消費者を知るうえで、広告主にとって非常に貴重なものになる」とニューヨークタイムズ紙に述べている。

一方で政治家や消費者保護団体は、「RADAR」についてプライバシー侵害を懸念する。ミネソタ州のアル・フランケン上院議員は「収集する個人データの種類、本件に関わるすべての企業名、データ収集の方法、データの警備・保護方法、消費者に了承を得るすべての方法」など9つの質問状をCCO社CEOのスコット・ウエルズ氏に2月29日付で送付した。また消費者保護団体「Center For Digital Democracy」代表のジェフリー・チェスター氏は「追跡されデータを取られていることを消費者は知らない」とタイムズ紙に不快感を示した。

しかし前出のスティーブンス氏は「消費者データを集めてターゲティングするのは、モバイルやオンライン広告と同じ手法」と反論する。CCO社は、3月からニューヨーク、ロサンゼルスを含む全米11商圏でRADARの展開を開始し、年内にはその他の地域へ拡大する予定。従来のようにOOHを見た人をカウントするだけではない ...

あと53%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

米国広告マーケティング事情の記事一覧

米国広告マーケティング事情の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する