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コンサルティング会社のエージェンシー買収 日本市場への影響

なぜコンサル会社はエージェンシーを買収するのか

消費者のデジタル化は、企業側の革新を圧倒するスピードで進んできた。それを受け、企業経営の根本からデジタル化する必要が生まれているが、消費者変化が基点となるだけに、そこではマーケティング部門が重要な役割を担う。米国ではコンサルティング会社によるエージェンシー買収の動きが話題になるなど、デジタルマーケティングが経営の重要なファクターになる時代、多くの企業がこの領域に進出し始めている。日本市場への影響とは。

米国で、大手コンサルティング会社がデジタルエージェンシーを買収する動きが顕著になっている。なぜ、コンサルティング会社はエージェンシーを買収するのか。その動きと狙いを織田浩一氏が米国よりレポートする。

織田氏が取材を行った、External View Consulting Groupのラッセル・ウォールワース氏。大手広告主がエージェンシー選びをするプロセスやエージェンシーとの関係構築についてのアドバイスを行っている。

事業活動への貢献を考えると統合的な提案が必須に

ここ数年、IBM、デロイト、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)、アクセンチュアなど、従来はビジネス戦略・ITコンサルティング会社と考えられてきた企業群が、エージェンシー機能を社内に構築したり、クリエイティブエージェンシー、デジタルエージェンシーを買収して、広告・マーケティングサービス市場に参入してきている。

背景は調査会社ガートナーによる、2017年には大手企業のCMOが使うIT予算がCIOの予算を超えるという4年前の予測にある。CMOはCRM・DMP・データウェアハウスといったデータ関連のツールから、マーケティングテクノロジー、アドテクノロジーに加え、様々なITへの投資を行い始めている。戦略立案に加え、もともとIT分野の業務をしてきたコンサルティング会社が、新たな予算獲得のために、マーケティング分野へ進出するのは当然のことである。

私は、この動きについて、大手広告主がエージェンシー選びをするプロセスやエージェンシーとの関係構築についてのアドバイスを行うサーチコンサルタントであるExternal View ConsultingGroupのラッセル・ウォールワース氏に話を聞いた。External Viewでは、ポルシェ、エプソン、ニンテンドーなどの大手広告主のため、これまで数多くのエージェンシーレビューを手掛けており、コンサルティング企業系エージェンシーを含め、多数のエージェンシーの情報を集めている。

「これは、あまり驚くべきことではない。企業戦略のコンサルティング業務とIT、マーケティング・広告業務の境界は非常に曖昧になり、統合が当たり前になってきているからだ」と語る。「エージェンシーは、いくつもの専門性が統合しつつあることに対する認識が遅れているし、データや、その解析・分析の重要性に気がついていない。クリエイティブが今も、最も重要だと思っている。確かにクリエイティブは重要ではあるが、企業が求めるのはデータやその分析により得られたインサイトから導き出されたクリエイティブである」という。

さらに「統合的な仕事ができないと、成果を出しづらい環境にある。CMOも結果まで責任を持てる、パートナーを探している。コンサルティング会社が進出するのは当然の流れ」と続ける。

一部のコンサルティング系エージェンシーでは、パフォーマンスをもとにした報酬制度などを取り入れている。企業戦略も理解し、さらに売上げデータなどをマーケティング部門外から得られるコンサルティング会社としての強みを出してきているとも言えるだろう。

デジタルマーケティング領域で存在感を増す、コンサル会社

ここで、各コンサルティング会社の広告・マーケティング分野への進出状況を見てみよう。IBMは約20年前からIBM Interactive(現IBM InteractiveExperience:IBMiX)としてデジタルエージェンシー業務を担う部署を設置し、クリエイティブ、デジタル、解析担当者をグローバルで約1万人抱え、Visa、ネスレ、L.L.ビーンなどをクライアントにしている。2014年のグローバルでのデジタルエージェンシー業務の売上げは、15億9千万ドルに上る(AdAge誌調べ)。これまでは、独自にこのサービスを構築してきたが、2016年に入ってアメリカのマーケティング・クリエイティブエージェンシーであるResource/Ammirati、ドイツのマーケティング・デジタルエージェンシーAperto、ecx.ioを次々と買収して、クリエイティブ機能を強化している。

業務の例としては …

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