
外部マーケティング資源としての消費者行動
市場の異質性から競争優位を獲得する
● 著者/西本章宏
● 発行所/有斐閣
● 価格/ 3300円(税抜)
著者の西本氏が本書の執筆に至った経緯は、大きく分けて2つある。
一つは、昨今の厳しい競争環境に疲弊するマーケターにとって、希望を見出せるような新たなマーケティングの視点を提供したかったのだという。「多様化する消費者の価値観やライフスタイルを分析し、対応していかなければという論調を近年よく目にしますが、社会が日進月歩で成熟化する中、さまざまな購買経験をした消費者たちの多様性が増すことは当然のこと。そうした中で従来型の戦略を繰り返していてはマーケティングコストはかさむ一方です。消費者を『マーケティングをしなければならない対象』として考えるのではなく、マーケターに新たな競争優位を与えてくれる『外部マーケティング資源』として捉える。それは、『多様な消費者の中に、マーケティングのチャンスを見出す』ということにつながります」と西本氏。 消費者が多様化していなければ、消費者たちのニーズはある程度予測可能な狭い範囲のものとなってしまい、そのニーズに応えるために、品質を磨いてコスト削減できた企業が勝つような構図になってしまいはしないか――消費者が多様化していることを、差別化を図ることができる好機であるという視点を提供したいと考えた。
もう一つは、消費者行動研究という研究分野の立ち位置(アイデンティティまたはディシプリン)を再考する機会を研究者に提供したかったと西本氏。消費者行動研究は、マーケティングに最も隣接する研究分野の一つであるにも関わらず、学会や論文雑誌を見ていても、“マーケティングっぽい”データやテーマを扱っているだけで …