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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

メッセージを伝える「印刷物の編集・ディレクション」

向田 裕(通販クリエイティブディレクター)

読む側の「相手イメージ」を意識したアプローチやコピーワークが必要。

チラシ、リーフレットは初見でどれだけインパクトを残せるか

広告業界全体を見渡すと、やはり時代はデジタルメディアへシフトしている感がありますが、商品の種類や広告の目的によっては、まだまだアナログメディアが有効な場合も多くあります。とくにダイレクトメール(以後DM)、チラシ、カタログなどの印刷メディアは、手元に残しておける「保存性」や、相手と一対一の感覚でメッセージを届けられる点で、レスポンスを得る媒体として根強い力を持っています。今回はそうしたダイレクトメディアについて、どんなアプローチが有効なのか?クリエイティブのあり方を媒体別に整理してみます。

まず、一枚物のチラシやリーフレットなどの場合を考えてみましょう。キーワードは「インパクト」です。たとえば何気なく「新聞折込チラシ」を眺めている時、私たちは目に入ったコピーと写真をサッと見て、そのチラシを読み続けるか止めるかを瞬間的に判断します。一枚物の場合、この「つかみ」のインパクトの強さで大方の勝負が決まってしまいます。

オープニングの表現(メインコピー&写真など)で大切なのは、読み手に「自分のことだ!」と気づかせることです。その上で、商品の特長を「ベネフィット(購入者の利益)」で伝えます。『ウコン入りの栄養ドリンク』を例にとれば、「会社で接待の多いあなたに!」と誰に向けたメッセージなのかを明確にして、続きはウコンやドリンクの説明ではなく、「これで二日酔いの朝も目覚めがスッキリしますよ」と、読み手側にとってのメリットで表現します。

ビジュアルも、インパクトを増幅するポイントです。たとえば『ダイエット・ジム』の会員募集の場合なら、「たった2カ月の短期プログラムで、あなたの身体が……」のコピーの横に、メインターゲットの「ビフォアー・アフターの写真」を載せます。このようにコトバ(理屈)とビジュアル(感情)の組み合せで訴求すると印象がさらに強まります。

本文で一通りの説明を終えたら、最後は「ぜひ、あなたも夏までにスリム体型を目指しませんか?」などのクロージング・コピーで締めくくります。

フリーダイヤルなど「申込み方法」の説明は、商品説明の部分とはフォーマットやフォントを変えるなどして目立たせましょう。紙媒体の場合はハガキとの親和性が高いので、紙質を考慮(薄いとハガキとして使えない)して切り取り式ハガキをつければ確実にレスポンスが増えます。そして付近に必ず「今すぐ、下のハガキでお申込みを!」などのアクション・コピーを入れて具体的な行動を促します。

一枚物の広告ではクリエイティブというよりも、やはりその商品(あるいはサービス)自体の価値の大きさがモノを言います。競合品と比べてベネフィットの固有性が弱いと感じる場合は、「オープン記念、今だけ半額!」とか「抽選で◯名様に△△をプレゼント!」といったオファー(特典)をプラスして、その広告でしか享受できない購入の魅力を付け加える必要があるでしょう。

消費者が、広告を見てから購入に至るまでの心情を分析しプロセス化した学説に「AIDMA(アイドマ)の法則」があります。他にもAISAS(アイサス)、AIDCA(アイドカ)がありますが、最近では「M」を省いた「AIDA(アイーダ)の法則」が主流なのだそう。しかし、印刷媒体の「保存性」を考えた場合は、興味→行動(買う)に移る間の「記憶」のプロセスがとても大切です。

封書DMは「手紙」パーソナルな表現を心がける

封書DMも基本的な訴求構造は一枚物と共通ですが、封筒+レター+ブローシャー(本体のパンフレット)+申込みハガキと、パーツを分けることによってさまざまな仕掛けが可能となり、クリエイティブの余地も増えます。

キーワードは「パーソナル感」です。DMは送る相手をハウスリストなどからセグメントするケースが多いと思います。購入履歴の多いお得意さま、過去に食品を買ってくれた人、子育て中の主婦……相手の顔がある程度見えるわけですから、その適性に合ったメッセージや演出を施すことで、不特定多数を相手にする広告よりもレスポンス率は上がります。

まず、受け手が気にするのは、誰から来たのか?……そう、封書DMは手紙と一緒です。相手に対して初めてのお便りなら「はじめまして」の一言や、お馴染みさんなら「お元気ですか?」の問いかけでもいいでしょう。封筒の目につくところに相手との関係性を示す一語を。そして、すぐに開封してもらえるように、「中には、あなたにとってお得な情報が入っている」ことをほのめかしたり、「選ばれたあなただけに送付した」というパーソナル感を演出するティーザー・コピー(じらし文句)を用います。ともかく、そのままゴミ箱行きにならないように「親展」の表記をしたり、シリアルナンバーを刷り込んだ「くじ」のようなギミックを使うなど工夫を凝らします。

首尾よく開封してくれたら、次に読んでもらうのが「レター」です。つまり正式なご挨拶状ですね。なぜ、送り先としてあなたを選んだのか?どうしてこの商品をあなたに薦めるのか?を訴えます。最近は …

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