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目指すはサービス提供の場としてのデジタルチャネル活用─ANA デジタルマーケティングチームの新たな挑戦

アドビ システムズ

搭乗前のチケット予約だけでなく、空港、機内、着陸後までスマートフォンの浸透で、航空会社と顧客のデジタル接点は拡大している。全日本空輸(ANA)ではこうした流れをいち早く捉え、会社全体のデジタルシフトを加速させている。

(左から)ANA 西村健氏、アドビ システムズ 安西敬介氏、ANA 冨満康之氏

消費者がオンライン上で活動する時間が長くなったことは、様々な業態のビジネスモデルを大きく変化させている。特にネットの登場前と後で、大きく変化をした業界の代表例とも言えるのが、航空会社。実際、全日本空輸(ANA)では国内線の航空券予約の9割弱はウェブが占める状況になっている。

ANAでは1995年にサイトを開設、97年からオンラインでのチケット販売を開始したが、単に航空券を販売する場としての位置づけでは、デジタルを捉えきれなくなっている。こうした環境にいち早く対応すべく、ANAでは2012年より宣伝部とWEB販売部がマーケットコミュニケーション部の傘のもとに統合。ペイド、オウンド、アーンドのトリプルメディアを統合的に活用できる体制を構築した。さらに2015年4月からは、WEBチームの名称をデジタルマーケティングチームへと改編。企業のデジタルシフトを支援してきた、アドビ システムズとパートナーシップを組みながら、新たな挑戦を始めている。

アドビ システムズ グローバル サービス統括本部コンサルティング サービス本部 DMSコンサルティング部・シニアコンサルタントの安西敬介氏が、ANA マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチームのリーダー・冨満康之氏、西村健氏に同社のデジタルマーケティングの取り組みを聞く。

デジタルとリアル統合のトリプルメディア戦略

安西▶ 冨満さん、西村さんが属するデジタルマーケティングチームは、社内においてどのような役割を担っているのですか。

冨満▶ マーケティング室の中にマーケットコミュニケーション部があり、さらに宣伝チームとデジタルマーケティングチームに分かれています。マーケティング室の中には、路便計画の立案やダイヤ編成を行うネットワーク部、座席管理やプライシングなどのコントロールを担うレベニューマネジメント部、さらにマイレージ会員を対象に、マイレージサービスの企画・運営や顧客とのコミュニケーションを行うロイヤリティマーケティング部、そして私たちのマーケットコミュニケーション部の4つの機能で構成されています。他の部と比較すると、マーケットコミュニケーション部は、ANAのマーケティング全般を担う役割がますます求められている組織だと考えています。

安西▶ 具体的な部門の役割をお話しいただけますか。

冨満▶ マーケットコミュニケーション部は2012年に、主にマス広告を担当していた宣伝部、そしてオンラインでのチケット販売を担当していたWEB販売部が統合して立ち上げられた組織です。オンライン、オフラインの区別なく、トリプルメディアを活用したコミュニケーションを実現するために実施された組織改編でした。

安西▶ マーケットコミュニケーション部の中でも、冨満さんはデジタルマーケティングチームのリーダーとして、ANAのデジタルシフトを推進していらっしゃいます。

冨満▶ 今年の4月にそれまで宣伝チームに入っていたSNS、メールマーケティングの機能を私たちのチームに入れ、デジタル領域全体を担うことになりました。

安西▶ 同じ部にある宣伝チームとの連携はうまくいっていますか。

冨満▶ 部長、宣伝チームのリーダーと私との間で常に連携し合い、密なコミュニケーションをとっているので、宣伝チームとデジタルマーケティングチームの間に摩擦が起きるようなことはないですね。よい関係性の中で仕事ができています。マス広告が強力な武器であることは、いまの時代も変わらない事実。ただ、マス広告を打った後の受け皿としてのデジタルが機能しなければ、せっかくの投資も意味をなさないという認識で、連携しながら推進しています。

また役割が変わったことを機に、今年の4月からチームの名称を「WEBチーム」から「デジタルマーケティングチーム」に変更しました。

デジタルから始まる新しいサービス設計

安西▶ 新しいチームの名称から、ANAさんのデジタルに対する考えや理想が伝わってきますね。

冨満▶ 以前であれば「デジタル=予約サイト」という捉え方で、チケットの予約機能を開発・改良していけばよかった。しかし、現時点では国内予約の約9割はウェブ販売に移行しており、機能を研ぎ澄ますだけでは、飛躍的な売り上げ増加は見込めません。一方でお客さまに目を向ければ、たとえばスマートフォンのようにデジタルの進化・拡大は、もはや無視できない状況となっています。

航空会社はお客さまを移動させる役割を果たしますが、その移動中、常にネットにつながるスマートフォンがお客さまの手の中にある状況は、我々にとって、お客さまとのコミュニケーションのあり方を変えたり、新しいサービスを開発する可能性につながっています。エアラインビジネスにとって、デジタルは親和性が高く、顧客の情報を取得した上であらゆるタッチポイントを通じて接していきます。デジタルの役割が「予約を受け付ける」ことから、「コミュニケーションを図る」「サービスを提供する」ところに変わってきているのです。デジタル軸でコミュニケーション戦略を考え、マーケティングの成果につなげていく。それが、デジタルマーケティングチームが今後担っていかなければならない役割なのだと考えています。

安西▶ お客さまと接点を持てるデジタルチャネルは航空券予約の機能を提供するサイトだけでなく、広がってきている。そこでWEBからデジタルマーケティングへと名称を変えたということですね。

これまでのWEBチームは、あくまで「プリトラベル」が対象だった。しかし冨満さんが指摘されるようにスマートフォンが浸透したことでオントラベル、さらにはアフタートラベルまで、デジタルを介して、いかにお客さまに魅力的なサービスを提供できるかという視点が必要とされています。

西村▶ 私たちは、ANAのサービスは世界一だと思っています。ANAならではのサービス力にデジタルが加わったら、これまで以上に魅力的な体験が提供できるのではないか、と考えています。

冨満▶ これからはデジタルが起点となる新しいサービス設計の形があってもよいと考えています。サイトにとどまらず、よりお客さまに満足いただける新しいコミュニケーションを実現していきたいですね。

そもそもお客さまはプリトラベルやアフタートラベルを分けて捉えているわけではありません。予約サイト、空港、客室など、縦割りで部門を分けているのは、あくまで企業側の都合です。セクションに関係なく、お客さまと接点のあるそれぞれのポイントを横断的に捉え、考えていくことが今、求められていると思いますし、それを実現に結びつける方法がデジタルなのではないかと考えています。

西村▶ チーム名称を変えたことで、社内の様々な部門から相談が寄せられる機会も増えました。私たちの部門が社内の各部門をつなげるような役割を果たしていければと考えています。

冨満▶ デジタルの活用はグローバル市場を狙う上でも不可欠なことです。現在、当社の航空券販売における国際線の比率は約40%を占め、その比率は年々高まっています。巨大な海外市場が対象では国内のようにマス広告を打って、ブランド認知を高めるというアプローチは使えません。デジタルを使って、認知を広げ、まずは我々のサイトを訪問してもらう。国内市場、海外市場では異なるデジタルの活用目的を描いています。

意思がなければテクノロジーは使えない

安西▶ デジタルマーケティングチーム設立に際して、組織として様々なチャレンジがあったと思います。

冨満▶ 私は常に自分たちの仕事の枠組みやプロセスを見直し、進化させていきたいと考えています。今回のチャンジの中で、特に力を入れたいのがPDCAサイクルに基づく業務プロセスを実行することです。これまで当社はPDCAで言うと、DOの部分に注力してしまう文化がありました。PDCAの話は、決して目新しいことではありませんし、マーケティング以外の他部門でもよく出てくる話ですが、なかなか定着していない。だからこそ、業務プロセス改革に本気で取り組んでいくというだけでも大きなチャレンジだと思っています。

ただ、その実行に際して自らの意識改革だけでは限界がある。そこでアドビさんを始めとする社外の人たちの力を借り、さらにテクノロジーの力も駆使して、それを実現させていこうと考えています。

西村▶ PDCAの中でもDOではなく、PLANとCHECKの部分に時間をさけるようになっていきたい。その時間を捻出するため、昨年度は1年間かけてサイトのリニューアルも実施し、サイト運用の効率化を図りました。

安西▶ ANAさんは、デジタルでやりたいこと、目指すことが明確ですよね。

冨満▶ 「何のために、何をしたいのか」という意思がなければ、デジタルテクノロジーは使いこなせない。チーム内でも正解かどうかはわからなくても、常に自分なりの強い思いとともに、仮説にトライする姿勢を持ってほしいと話をしています。

安西▶ 「Adobe Analytics」を長年ご利用いただいているANAさんですが、2015年4月より、「Adobe Marketing Cloud」の他のソリューションも本格的に導入いただき、そこから私たちコンサルティングチームとのお付き合いも本格化していますが、現場の担当の皆さんがそれぞれに自分なりの検証してみたい仮説をお持ちだと感じます。

自分たちの知識を高めより高次元な関係へ

西村▶ 各担当者が自分なりの仮説を持っているのはよいことですが、一方で、それぞれの仕事の中でツールを導入してしまうと、結果的にソリューションがパッチワーク化し、チームとして目指すデジタルマーケティングは実現しない。「Adobe Marketing Cloud」を選んだのは、アナリティクス、テスト、パーソナライゼーションやソーシャルなど、私たちがやりたいことすべてに対応したソリューションが内包し連携されていること。また「AdobeMarketing Cloud」のソリューション戦略の全体像が、私たちが理想として描いているデジタルマーケティングの姿と合致していたためです。

安西▶ アドビに対して、今後期待されることとは何でしょうか。

冨満▶ アドビさんとお仕事をするにあたって、我々の方も意識を変えていかなければならないと思っています。私たちの側から「そのソリューションで何ができますか?」という質問をすべきではない。どのような目的で、何をしたいのか、意思を明確に持った上でアドビのコンサルタントとお付き合いしたいし、より高い次元での会話ができる関係になりたいと思っています。

安西▶ 組織の中でデジタルシフトの様な大きな変化を起こすには、経営層や上層部の理解とサポートが必須だと思います。ANAさんのデジタルシフトには経営層、上層部の方たちはどのような関わり方をしていますか。

冨満▶ 直属の上司であるマーケットコミュニケーション部の部長とは、常に話し合い、情報を共有し、私と一緒に戦ってくれているという状態にあります。部全体に責任を持つ者がデジタルマーケティングの実践にコミットし、社内への訴求に力を注いでくれることは心強いです。また経営層に至っても、デジタルシフトという変革を起こすことの重要性を理解し、我々の活動を支持してくれています。だからこそ、早く成果を出したいと考えています。今回、導入した「Adobe Marketing Cloud」を使いこなして、どんどん成果を積み重ねていきたいと考えています。

安西▶ なるほど、ANAさんではデジタル時代に必要な戦略と活動を実践する現場、それを理解し支援する経営層が一丸となって、組織の変革を実現しているのですね。当社も引き続きANAさんのデジタルシフトをサポートさせていただければと思います。ありがとうございました。

ANAさんは、目指す理想が明確です

アドビ システムズ
グローバルサービス統括本部 コンサルティングサービス本部 DMSコンサルティング部 シニアコンサルタント
安西 敬介 氏

前職は航空会社でWEBに従事。解析/ターゲティング/ソーシャルなどを中心に200を超えるWEBサイトへのコンサルティングを実施。執筆、講演多数。

デジタルマーケティングチームは強い変革意欲と実行力を持って具体的な成果を積み重ねていきたい

全日本空輸
マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチーム リーダー
冨満 康之 氏

ANAのサービスにデジタルを加えて、より魅力的な体験を提供したい

全日本空輸
マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチーム
西村 健 氏

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